■ガウスの問題とデーンの定理(その3)
<Im>=A+B√2+C√5+D√10≠0
において係数A,B,C,Dは同時に0にならないことを示してみよう.
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【1】デーンの定理の一般化(目標)
正四面体 → cosδ4=1/3,sinδ4=√8/3
立方体 → cosδ6=0,sinδ6=1
正八面体 → cosδ8=−1/3,sinδ8=√8/3
正十二面体 → cosδ12=−√5/5,sinδ12=√20/5
正二十面体 → cosδ20=−√5/3,sinδ20=2/3
より,
Z4=1/3+√8/3i
Z6=i
Z8=−1/3+√8/3i
Z12=−√5/5+√20/5i
Z20=−√5/3+2/3i
Z6+4=−√8/3+1/3i
とおく.|Zi|=1
5種類の正多面体での分解合同(分解相似?)の関係式
n1δ4+n2δ6+n3δ8+n4δ12+n5δ20≠kπ
n1δ4+n2δ6+n3δ8+n4δ12+n5δ20≠0 (mod π)
は,δ8=π−δ4より,
(n1−n3)δ4+n2δ6+n4δ12+n5δ20≠0 (mod π)
これは
(n1−n2−n3)δ4+n2(δ6+δ4)+n4δ12+n5δ20≠0 (mod π)
と変形できるが,δ6=π/2であるからさらにδ6も外すことができて
N1δ4+N2δ12+N3δ20≠0 (mod π)
とより簡潔に書くことができる.
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【2】デーンの定理の一般化(証明のGedankengang)
[1]第1段階
Z4=1/3+i√8/3については,
z−1/3=i√8/3
より,Z4は2次方程式3z^2−2z+3=0の解であるから,
z^2=2/3z−1
z^3=2/3z^2−z=(2/3)^2z−2/3−z=−5z/9−2/3
以下同様に,z^mはzに関する1次式
z^m=amz+bm (am≠0,bm≠0)
の形に書ける.
n1δ4+n2δ6=kπ
が成り立つとすると
amz+bm=0,±1
両辺の虚部を比較すればam=0が得られるが,これではδ4,δ6が線形従属となってデーンの定理に矛盾する.am≠0,bm≠0は
n1δ4+n2δ6=kπ
が成り立たないための条件である.
また,
3^m-1z^m=az+b (a≠0,b≠0)
を考えればa,bは整数となる.
3z^2=2z−3
3^2z^3=−5z−6
3^3z^4=−28z+15
自然数m≧2に対して,aは3で割り切れない,bは3で割り切れることを帰納法により示すことができる.
(1)m=2のとき,a=2,b=−3より正しい.
(2)mのとき3^m-1z^m=az+bが成り立つと仮定すると,m+1のとき
3^mz^m+1=3az^2+bz=(2a+3b)z−3a
より正しい.よって
a≠0,b=0 (mod 3)
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[2]第2段階
Z20=−√5/3+2/3iについては,
z+√5/3=−i2/3
より,Z20は2次方程式3z^2+2√5z+3=0の解である.
3^m-1z^m=az+b (a≠0,b≠0)
を考える.また,Z4の場合a,bは整数となるが,Z12,Z20ではkあるいはk√5(kは整数)の形となる.
3z^2=−2√5z−3
3^2z^3=z+6√5
3^3z^4=14√5z−3
このような場合においても整数部分kが3で割り切れないことを
a≠0 (mod 3)
と書くことにする.
帰納法により,mのとき3^m-1z^m=az+bが成り立つと仮定すると,m+1のとき
3^mz^m+1=3az^2+bz=(−2a√5+3b)z−3a
であるから,
a≠0,b=0 (mod 3)
がいえる.
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[3]第3段階
Z12=−√5/5+√20/5iの場合はいささか事情が異なる.
z+√5/5=−i√20/5
より,Z12は2次方程式5z^2+2√5z+5=0の解である.
5z^2=−2√5z−5
5^2z^3=−5z+10√5
5^3z^4=60√5z+25
5^m-1z^m=az+b (a≠0,b≠0)
を考える.また,帰納法により,mのとき5^m-1z^m=az+bが成り立つと仮定すると,m+1のとき
5^mz^m+1=5az^2+5bz=(−2a√5+5b)z−5a
であるから,
b=0 (mod 5)
はいえるが,a=k√5のとき,−2a√5+5bは5で割り切れる.
m=2 → a≠0,b=0 (mod 5)
m≠2 → a=0,b=0 (mod 5)
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[4]第4段階
ここで,複素数の積
Z=3^N1-1Z4^N1・5^N2-1Z12^N2・3^N3-1Z20^N3
を考える.複素数の掛け算は偏角の足し算に対応し,実数3^N1-1,5^N2-1,3^N3-1の偏角はすべて0であるから,Zの偏角
Arg(Z)=Arg(Z4^N1・Z12^N2・Z20^N3)=Arg(Z4^N1)+Arg(Z12^N2)+Arg(Z20^N3)
がnπにならないこと,すなわち,Z4^N1・Z12^N2・Z20^N3の虚部
Im(Z4^N1・Z12^N2・Z20^N3)
が0にはならないことがいえればよいことになる.
結局
Z=(a1Z4+b1)(a2Z12+b2)(a3Z20+b3)=Re+Imi
Im≠0
a1≠0,b1=0 (mod 3)
a3≠0,b3=0 (mod 3)
b2=0 (mod 5)
に帰着されれば,N1δ4+N2δ12+N3δ20は有理係数で線形独立であり,必要な原子が最低4種類という結論が主張できることになる.
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