■和算にまなぶ(その24)

 あけましておめでとうございます.今年の正月は秋田で友人の届けてくれた鴨肉とツブ(田螺)を肴に酒三昧の寝正月でした.さきほど帰仙し,年賀状をみていたら,中川宏さんがコラム「和算にまなぶ(その3)」で紹介した○△□の定理をロゴ化しておりました.自分で発見した定理は(たとえそれが再発見だとしても)とても励みになるものです.

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【1】和算に挑戦

 始まりは,中川宏さんが

  佐久間鑽「算法起源集」,1877年

の問題を解いたことであった.

 その問題は正方形の上に正三角形が載っている図形の外接球に関する問題で,正三角形(2次元角錐)の頂点と立方体の頂点が,同じ長さの半径からなる球上に存在するというものであった.

 中川さんはその問題を3次元に拡張し,J8(立方体の上に四角錐が載っているもの)の外接球についても成り立つことを証明している.→コラム「和算にまなぶ(その3)」

 そもそも中川さんが和算の問題を取り上げたのは,五輪先生(福島県の高校の数学の先生)が和算研究に携わっている関係だという.

 この問題の4次元以上の場合を検討してみたところ,4次元では4次元立方体の上に3次元立方体を底面とする角錐が載っている図形が2,3次元同様,外接球のもつ性質が成り立つことが判明した.

 5次元以上ではn次元立方体の上に載るn−1次元立方体を底面とする角錐は存在しないこともわかったが,ともあれこれは面白い性質であるということになった.

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【2】もうひとつの拡張する方向

 コラム「和算にまなぶ(その3)」の定理は,4次元にも拡張することできることがわかったが,もうひとつの拡張する方向がある.その後,五輪先生により,J7(3次元の三角柱と三角錐),J9(五角柱と五角錐)にも成り立つことが判明した.

 この問題についても4次元以上の場合を検討してみたところ,

[1]三角柱と三角錐版は次元に限らず存在可能で,同一球面上にあることが成り立つ.

[2]四角柱と四角錐版は4次元まで存在可能で,同一球面上にあることが成り立つ.

[3]五角柱と五角錐版は3次元まで存在可能で,同一球面上にあることが成り立つ.

[4]六角柱と六角錐版は3次元でも存在不可能である.

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【3】中川さんの疑問

 四角柱と四角錐の4次元版では,

  H^2=4−n=1

より,球の中心とその半径は(1,1,1,−1),半径2となる.

[a]角錐の頂点

  (1,1,1,1)

[b]角錐の底面=角柱の上面

  (0,0,0,0),(2,0,0,0),(2,2,0,0),(0,2,0,0),(0,0,2,0),(2,0,2,0),(2,2,2,0),(0,2,2,0)

[c]角柱の下面

  (0,0,0,−2),(2,0,0,−2),(2,2,0,−2),(0,2,0,−2),(0,0,2,−2),(2,0,2,−2),(2,2,2,−2),(0,2,2,−2)

[d]球の中心とその半径

  (1,1,1,H−2),半径2

 [c−d]間距離を計算するとどれも2となるのだが,投影図を描くとどうしても[d]の8点中7点しか球に内接するように見えないという.

 3次元人にはどのように描いたとしてもそのようにしか見えないのであるから仕方ないが,高次元図形に馴れるというよりも計算して確かめるしかない問題なのである.

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