地球は球面であるが,地図は平面で表現される.五万分の1の地図と同じ区域の二万五千分の1四枚を考察する.それぞれは曲面を平面に変換した地図であり,共有する領域には,ある種の変換式がなければならない.
われわれが最も慣れ親しんでいる世界地図は,メルカトール図法と呼ばれるものである.メルカトール図法は等角写像,すなわち,任意の点から任意の他の点までの正しい方向(方位角)を示す地図であって,海図として航海のナビゲーション用に広く使用されている.
地図はその目的によって,地球上の2点の正確な距離,形(面積),方向を保存するように工夫されているが,地球は丸いので,これらのどれかを保存することは他のものを犠牲にすることになる.
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【1】楕円近似
経線に正弦曲線を用いた地図投影法はサムソン図法,楕円を用いた地図投影法はモルワイデ図法と呼ばれ,ともに面積が正しく表される地図投影法である.(その3)では葉状曲面を正弦曲線で近似したのであるから,楕円で近似することも考えられるであろう.
y=b(1−4x^2/π^2)^1/2 (−π/2≦x≦π/2)
において,楕円の面積が球の表面積の1/nとなることより,係数bを求めると,
2∫ydx=π・π/2・b=4π/n
b=8/πn
y0=8/πn
しかし,楕円近似では極(x=±π/2)での接線の交角が1葉だけでπになってしまい,極では多重被覆されることになる.それでも,高緯度のひずみを無視して(その3)と同様,ひるまず計算を続けると
η=y0(1−4x^2/π^2)^1/2
ζ=η/y0=(1−4x^2/π^2)^1/2
dζ/dx=−2/π(1−4x^2/π^2)^1/2
1+(dζ/dξ)^2=(dx/dξ)^2
dξ/dx=(1−4/π^4(1−4x^2/π^2))^-1/2
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【2】放物線近似
それでは放物線
y=a(x^2−π^2/4) (−π/2≦x≦π/2)
で近似したらどうなるのだろうか?
放物線で囲まれた部分の面積が球の表面積の1/nとなる,すなわち,
2∫ydx=4π/n
が成り立つように係数aを決定すると
a=−12/π^2n
より
y=−12x^2/π^2n+3/n
y0=3/n
この曲線の赤道(x=0)での幅は6/nであるから,葉状曲面の2π/nより小さくなる.
また,極での接線の交角は,y’=2axより
24/πn(>2π/n)
となり,放物線近似でも極では過剰に被覆されてしまうことがわかる.
高緯度のひずみを無視して(その3)と同様に計算すると
η=−12x^2/π^2n+3/n
ζ=η/y0=−4x^2/π^2+1
dζ/dx=−8x/π^2
1+(dζ/dξ)^2=(dx/dξ)^2
dξ/dx=(1−64x^2/π^4)^1/2
これより,体積
V=2n∫ηζdξ
=2n∫(0,π/2)ηζ(1−64x^2/π^4)^1/2dx
を計算することもできるが,この辺でやめておこう.
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