中正方形と小正方形をいくつかのピースに切り離して並べ替えて,1つの大正方形を作るというパズルがあります.あるいは2つの正方形に砂粒を充填し,それを大正方形に移動させることによって面積を測るものもあります.
これらのパズルは面積を使ったピタゴラスの定理:a^2=b^2+c^2の証明玩具になっています.今回のコラムではこの考え方を応用して,正三角形を6ピースに切って並び替えて正方形に作り替えるパズルを紹介します.
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【1】長方形の分割
1辺の長さが2の正三角形の面積は3^1/2であるから,正三角形と同じ面積をもつ正方形の1辺の長さは3^1/4でなければならない.
1回で正三角形から正方形に移すことは簡単ではないから,長方形を正方形に等積変形させることを考えよう.正三角形を中線で2つの直角三角形に分割して並べ直せば1回で1×√3の長方形を作成することができる.この長方形の頂点と1辺の長さ3^1/4の正方形の頂点を同じ点に固定して,長方形の長い方の辺上に正方形のもう一つの頂点がのるように重ねる.
長方形の頂点をA(0,√3),B(0,0),C(1,0),D(1,√3),正方形の頂点をA(0,√3),P,Q,Rとし,辺CD上に点Rがあるものとする.このとき,AR=3^1/4より,
R(1,√3−(√3−1)^1/2)=(1,.876451)
点Rを作図で求めるためには,点E(0,√3+1)をとり,BEを直径とする円を描き,辺ADの延長線と円の交点をFとすればAF=ARとなる.
P(−(√3−1)^1/2,√3−1)=(−.8556,.732051)
A+Q=P+Rより
Q(1−(√3−1)^1/2,√3−1−(√3−1)^1/2)=(.1444,−.123549)
このとき,長方形の頂点Bは正方形の辺PQ上にのっていることがわかる.また,2つの図形を重ねてはみ出したところを切り取ってピースを作るのだが,辺BCと辺QRの交点Sの座標は
S(√3(1−(√3−1)^1/2),0)=(.250109,0)
RS:SQ=.876451:.123549
三角形BQSをy軸方向に平行移動させて,頂点Bを頂点Aに重ねた三角形をAQ’S’とすると
Q’(1−(√3−1)^1/2,2√3−1−(√3−1)^1/2)=(.1444,1.6085)
S’(√3(1−(√3−1)^1/2),√3)=(.250109,1.73205)
さらに,対角線BDと辺ARの交点Tは
T(√3/(√3+(√3−1)^1/2),3/(√3+(√3−1)^1/2)=(.669353,1.15935)
と求められる.
AQ’:Q’T:TR=.1444:.524952:.3306407
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【2】正方形の分割
こうして長方形ABCDに対してBD,AR,RS,Q’S’で6ピースに切断し,それらを並べ替えると正方形を作ることができる.厚手の正方形の板APQRから切り出す場合の寸法を示しておきたい.
APを.876451:.123549=s:1−sに内分する点をUとする
PQを.524952:.330647:.1444=t:u:1−t−uに内分する点をV,Wとする
QRを.123549:.876451=1−s:sに内分する点をXとする
RAを.3306407:.6693593=xu:1−uに内分する点をYとする
点Wと点X,点Wと点Y,点Wと点Aを結び,AWを.506019:.493981=v:1−vに内分する点Zをとり,点Zと点U,点Zと点Vと結べば正方形分割ができあがる.
各点の座標を
A(0,1),P(0,0),Q(1,0),R(1,1)
U(0,1−s),V(t,0),W(t+u,0),X(1,1−s),Y(1−u,1)
s=.876451,t=.524952,u=.330647,v=.506019
と定めると
Z(v(t+u),1−v(1−t))
これらから各ピースの角度を計算することができる.
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【3】雑感
このパズルでは6ピースを並べ替えると正方形を作ることができるが,正三角形を作るためには3ピースを裏返ししなければならない.また,長方形から正方形に等積変形させる際にも,カンタベリー・パズルのようにハトメ返しすることができず,並べ替えが必要になる.以下に,中川宏さんに製作してもらった6ピース・パズルの動作を示す.
デュドニーはわずか4ピースにして1回で正三角形から正方形にハトメ返しで移すのに成功したのであるが,カンタベリー・パズルの切断法がいかにエレガントなものかわかるであろう.
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