■π=3とゆとり
昨日「乙部融朗遺稿集」を出稿.肝心の資料が含まれていないのではという不安は残っているが,多少のゆとりを感じる.
私が小学生のとき最初に教わったπはおよそ3であった.その後,πはおよそ3.14であって,実際は循環しない無限小数となることを知った.野崎先生の「πの話」岩波書店を読んで,πの計算に一生捧げた(棒に振った)数学者たちに心を躍らせたことを憶えている.
本稿で何度も取り上げたことがある問題
「πは3.05より大きい」
ことを示してみたい.
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今から2000年以上も前の紀元前3世紀,アルキメデスは円に内接・外接する正96角形による計算から3・10/71<π<3・1/7,あるいは小数で表すと3.14084<π<3.142858よりπ=3.14という近似値を求めています.
正96角形に引き続いて,円の正多角形近似,すなわち,192,384,768,・・・など弧の2等分を繰り返すことによって辺の数を増してπの値が計算されました.ルドルフは正242角形の周を計算して円周率を35桁計算するために一生を費やしました.しかし,円の正多角形近似によって得られるπでは大幅な精度の向上は期待でず,17世紀まで注目すべき進歩はみられませんでした.
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ここで示すことはπ>3.05であるから円接多角形を考えてみよう.半径1の内接六角形であれば,周長の比較から
π>3
を示すことは簡単である.
内接12角形の前に,半径1の内接八角形で試してみよう.周長の比較から
2π>8・2・sinπ/8
ここで,
sin^2π/8=(1−cosπ/4)/2=(2−√2)/4
√2<1.145
より,
2π>8・2・sinπ/8→π>3.05
を示すことができそうだ.
内接12角形であれば
2π>12・2・sinπ/12
sin^2π/12=(1−cosπ/6)/2=(2−√3)/4
となって,もっとゆとりをもって目標をクリアできそうである.
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