■ねじれ重角錐の計量(その4)

 ゴールドバーグの14面体に組み合わせる12面体は,ねじれ重角錐台よりも五角十二面体の方がふさわしそうである.以前に計算したことがあるので,掲げておきたい.

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【1】ねじれ重角錐台の噛み合わせ条件

 ねじれ重角錐(n^25^2n)の五角形の頂点をAとすると,辺CDが正n角形(n=6)と組み合わさる辺でその長さをa,辺BC=辺DE=b,辺AB=辺EA=c,底角∠C=∠Dで表します.

 すると,五角形同士がうまく噛み合ってねじれ重角錐が閉じた形に組めるための条件は,yに関する4次方程式

  f=y^2(y+a/(2sin(π/n))^2{(sin(π/n))^2+(cos(π/n)-1)^2-(1/cos(π/n)-1)^2}+b^2(y+a/(2sin(π/n))^2(1/cos(π/n)-1)^2-c^2y^2=0

に帰着されます.

 これに可変角切稜を施した五角十二面体の諸計量を入力すると

 d  f     b/a    底角     頂角     切稜角

.10 -176.217 4.13258 121.051 79.1055 41.9872

.15 -25.6501 2.6994 118.833 83.7461 40.3646

.20 -5.81484 1.98839 116.554 88.6134 38.6598

.25 -1.64248 1.56655 114.228 93.6951 36.8699

.30 -.516016 1.28954 111.872 98.9749 34.992

.35 -.164619 1.09551 109.506 104.431 33.0239

.40 -.0460511 .953509 107.155 110.038 30.9638

.45 -5.15693E-03 .846366 104.845 115.767 28.8108

.50 8.20465E-03 .763763 102.604 121.588 26.5651

.55 .011615 .699139 100.463 127.471 24.2278

.60 .0115542 .648126 98.4498 133.386 21.8014

.65 .0104571 .607715 96.5953 139.309 19.2901

.70 9.22038E-03 .575771 94.9269 145.218 16.6993

.75 8.14542E-03 .550757 93.4697 151.099 14.0362

.80 7.30648E-03 .531556 92.2461 156.944 11.3099

.85 6.69749E-03 .517359 91.2746 162.75 8.53076

.90 .0062905 .507595 90.57 168.522 5.71059

  d=0.463178   (φ=28.2279°)

のときf=0となって,両者の五角形面が一致することが理解されます.

  a=1,b=0.822532,c=0.822532

  底角θ=104.247°,頂角=117.294°

  正六角形面間の距離hは,h=1.81637

 また,このとき5角12面体の二面角は180°−2φ=123.5442°,重角錐台の二面角は116.09°となります.しかしこの両者の組合せでは,空間充填の必要条件である

  5角12面体の二面角+ねじれ重角錐台の二面角×2=355.724°<360°

となって若干の角不足となることがわかりました.

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【2】空間充填条件

 そこで次に五角形面の形の一致性を犠牲にして,空間充填の必要条件=360°を満足させることを考えます.たとえば,5角12面体の二面角を120°に設定して削りとると,切稜角φは30°ですから,

  tanφ=1−d=1/√3

  a=1,b=0.901388,c=0.901388

  底角θ=106.102°,頂角=112.62°

 a,b,θをこのまま保持した条件で,ねじれ重角錐台を作ると

  a=1,b=0.901388,c=0.850907

  底角θ=106.102°,頂角=123.626°

  h=1.84808

このとき,二面角は120°となり

  5角12面体の二面角+ねじれ重角錐台の二面角×2=360°

 φ=28.2279°にすると五角形面の形は一致するが,空間充填条件を満たさない.また,φ=30°にすると空間充填条件は満たすが,五角形面の形が一致しない.そこで,φ=29°の木工模型を作ることが考えられるというわけです.

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【3】雑感

 シリコンフラーレンでは天地面は正方形ではなく,長方形でその長軸方向は90°ずれていましたし,それに応じて五角形面も1種類ではありませんでした.しかし,絶対零度でない限り分子は固定されたものではなく絶えず振動しているわけですから,縦長の長方形が横長に,横長の長方形が縦長になる途中では正方形になるときがあるはずです.

 このことから,ウィアの14面体でも天地面を正六角形にして構わないものと思われます.模型ですから精確さよりも単純さ,計算のしやすさ,作りやすさを優先させたいのです.また,ウィアの12面体はねじれ重角錐台型(5^25^10)でなく,5角12面体型(5^12)にしてみました.これも計算のしやすさからの配慮です.

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