■ねじれ重角錐の計量(その2)
14面体というと,ケルビンの14面体,ウィリアムスの14面体の他に,重角錐台型(4^126^2)やねじれ重角錐台型(5^126^2)も考えられます.ねじれ重角錐台型はケルビンの14面体と区別するために「ゴールドバーグの14面体」と呼ばれています.ゴールドバーグの14面体はspace fillerではありませんが,ウィア・フェランの14面体にでてくる多面体です.
f=14のときメディアル多面体は5^126^2型のねじれ重角錐台(truncated double skew pyramid)となります.もし,ゴールドバーグの予想が正しければ,f=14のときの等周比の最小値はケルビンの14面体(4^66^8)ではなく,ゴールドバーグの14面体(5^126^2)によって達成されることになります.
M. Goldberg: The isoperimetric problem for polyhedra, Tohoku Math. J. 40, 226-236(1935)
によれば
等周比
4^66^8 150.123
5^126^2 143.89 (軸の傾き:26°50′)
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【1】ゴールドバーグの14面体の計量
5^126^2型のねじれ重角錐台は一意には決まりません.単位球に外接し,さらに球の中心と各面の重心を結ぶ直線がその面と直交するという条件をつけてみましょう.
ねじれ重角錐(n^25^2n)の五角形の頂点をA,辺CDが正n角形と組み合わさる辺とします.そして,空間座標を
A(0,y3,z3)
B(−x2,y2,z2)
C(−x1,y1,1)
D(x1,y1,1)
E(x2,y2,z2)
また,放射線の中心を
F(0,0,z0)にとります(z3=−z2).
5角形面の重心は
G(0,Y,Z)
Y=(2y1+2y2+y3)/5,Z=(2z1+2z2+z3)/5
で与えられます.
ここで∠OFB=θとすると
y1/(z0−1)=y2/(z0−z2)=y3/(z0−z3)
=Y/(z0−Z)=Z/Y=(y2+y3)/2z0=tanθ
z0=1/sinθ,Y=cosθ,Z=sinθ
また,
x1/y1=x2/y2=tan(π/n)
x2/(y2+y3)=tan(π/2n)
さらに
y1^2=(Y−y1)^2+(Z−1)^2
より,
y1=(1−sinθ)/cosθ
y2+y3=2z0tanθ=2/cosθ
x2=(y2+y3)tan(π/2n)=2tan(π/2n)/cosθ
y2=x2/tan(π/n)=2tan(π/2n)/cosθtan(π/n)
y3=2z0tanθ−y2
Y=(2y1+2y2+y3)/5
=(2y1+y2+2z0tanθ)/5=cosθ
に代入すると
2(1−sinθ)/cosθ+2tan(π/2n)/cosθtan(π/n)+2/cosθ=5cosθ
に帰着されます.これはcosθに関する4次方程式になり,数値解は
n=4のとき,θ=28.20°
n=5のとき,θ=26.56°
n=6のとき,θ=25.66°
で与えられます.
M. Goldberg: The isoperimetric problem for polyhedra, Tohoku Math. J. 40, 226-236(1935)
の数値解とは約1°の差がありますが,いまのところ原因不明です.
その原因は
x2/(y2+y3)=tan(π/2n)
が成り立たないところにあるのではと思い当たりましたが,上記の計算は閉じた形に組まれるための条件をクリアしていることがわかりました.
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【2】閉じた形に組まれた(n^25^2n)構造
x2/(y2+y3)=tanα
の値が決定されないとと,その後の計算をどう進めてよいのかわかりません.何か条件を見落としているはずなのですが,ゴールドバーグの14面体が閉じた形に組まれるための条件を欠いているのではないかと気づきました.
反角柱とは違って,任意の五角形ではねじれ重角錐は組めません.ここでは閉じた形に組めるための条件を求めてみることにしましょう.
A(0,y3,z3)
B(−x2,y2,z2)
C(−x1,y1,1)
D(x1,y1,1)
E(x2,y2,z2)
の投影図形において
x2=y3sin(π/n),y2=y3cos(π/n)
したがって,
x2/(y2+y3)=sin(π/n)/(cos(π/n)+1)=tan(π/2n)
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