■ねじれ重角錐の計量(その1)
ねじれ重角錐(n^25^2n)の五角形の頂点をAとすると,辺CDが正n角形と組み合わさる辺でその長さをa,辺BC=辺DE=b,辺AB=辺EA=c,底角∠C=∠D=θ,頂角∠A=φで表します.θは90°<θ<(90+180/n)°の値をとるものとします.
そして,頂点Cの空間座標を(0,0,0),B(0,y,z),D(acos(π/n),−asin(π/n),0)にとると,
E((y+a/(2sin(π/n))sin(2π/n),(y+a/(2sin(π/n))cos(2π/n)-a/(2sin(π/n),z))
また,頂点Aの空間座標(ξ,η,ζ)は
ξ=(y+a/(2sin(π/n))sin(π/n)
η=(y+a/(2sin(π/n))cos(π/n)-a/(2sin(π/n)
ζ=z/y{(y+a/(2sin(π/n))(tan(π/n)sin(π/n)+cos(π/n)-1)}+z
で与えられます.
ただし,
b^2=y^2+z^2
c^2=ξ^2+(η−y)^2+(ζ−z)^2
c^2cosφ=−ξ^2+(η−y)^2+(ζ−z)^2=c^2−2ξ^2
=c^2−2(y+a/(2sin(π/n))^2(sin(π/n))^2
ξ,η,ζをc^2=ξ^2+(η−y)^2+(ζ−z)^2に代入すると,yに関する4次方程式
y^2(y+a/(2sin(π/n))^2{(sin(π/n))^2+(cos(π/n)-1)^2-(1/cos(π/n)-1)^2}+b^2(y+a/(2sin(π/n))^2(1/cos(π/n)-1)^2=c^2y^2
に帰着されます.
係数だけ抜き出すと
y^4の係数:{(sin(π/n))^2+(cos(π/n)-1)^2-(1/cos(π/n)-1)^2}
y^3の係数:a/sin(π/n){(sin(π/n))^2+(cos(π/n)-1)^2-(1/cos(π/n)-1)^2}
y^2の係数:a^2/(2sin(π/n))^2{(sin(π/n))^2+(cos(π/n)-1)^2-(1/cos(π/n)-1)^2}+b^2(1/cos(π/n)-1)^2-c^2
y^1の係数:ab^2/sin(π/n)(1/cos(π/n)-1)^2
y^0の係数:a^2b^2/(2sin(π/n))^2(1/cos(π/n)-1)^2
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【1】等辺(n^25^2n)構造
もし五角形面を等辺にしたいのなら,a=b=c=1とおいて0<y<1を満たすyを求めます.実際に方程式を解くと
n=3:解なし
n=4:解なし
n=5:重解
n=6:解2個
n≧7:解1個
となり,シリコンフラーレン型(4^25^8)では等辺のものはあり得ないことがわかりました.
n 二面角 θ φ
5 116.565 108 108 (正十二面体)
6 153.076 117.238 146.546 (横長五角形)
6 102.288 97.005 76.9186 (縦長五角形)
7 99.2919 94.4461 70.5531 (縦長五角形)
8 97.6236 93.1453 67.4036 (縦長五角形)
9 96.5175 92.3657 65.5416 (縦長五角形)
10 95.7161 91.8535 64.3282 (縦長五角形)
n→∞のとき,
y^4の係数→1
y^3の係数→1
y^2の係数→1
y^1の係数→0
y^0の係数→0
ですから,解はy→0となって五角形面はθ=90°,φ=60°のホームベース型に近づくことがわかります.
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【2】直角(n^25^2n)構造
噛み合わせ角度をφ=90°とし,たとえばa=b=1なる直角五角形にしたい場合は,
c^2=2(y+a/(2sin(π/n))^2(sin(π/n))^2
ですから,この4次方程式は2次方程式
y^2{-(sin(π/n))^2+(cos(π/n)-1)^2-(1/cos(π/n)-1)^2}+(1/cos(π/n)-1)^2=0
まで還元されます.この方程式はy^2の項と定数項だけなので実質的には1次方程式と同じです.
n 二面角 θ c
3 125.264 135 1.70711
4 114.47 112.5 1.2483
5 108.961 103.282 1.03203
6 105.542 98.7939 .923314
7 103.194 96.2725 .861621
8 101.473 94.71 .823233
9 100.156 93.672 .797681
10 99.1131 92.9459 .779789
n→∞のとき
y^2の係数→−1
y^0の係数→0
よりy→0となって,五角形面はθ=90°,φ=90°のホームベース型に近づくことがわかります.
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【3】正五角形面(n^25^2n)構造
正五角形を辺同士で環状に連結していくと,10枚でちょうどひとつの輪になります.このとき,この連結図形の外縁の噛み合わせ角度は144°となります.ここでは,正五角形10枚で一周するリングから1枚ずつ減らしていって,平行する天地面を正n角形にした場合の噛み合わせ角度を計算してみました.
一般には閉じた形には組めないわけですから,正五角形の頂点の空間座標は(ξ,η,ζ)にはなりません.そこで頂点を(α,β,γ)として求めてみると
β=-{tan(π/n)/cos(π/n)-(6+√5)y/2z^2}/{(tan(π/n))^2+1+y^2/z^2}
α={1/2+βsin(π/n)}/cos(π/n)
γ={(6+√5)/8-βy}/z
ただし
y=-cos(3π/5)/sin(π/n),z=-(1-y^2)^(1/2)
このとき,噛み合わせ部分の角度φは
cosφ=−α^2+(β−y)^2+(γ−z)^2
より求めることができて,実際に計算すると
n φ n φ
3 60 7 128.571
4 90 8 135
5 108 9 140
6 120 10 144
予想通り,n=5以外では側面の噛み合わせ角度が正五角形の頂角108°になりません.すなわち,天地面が正五角形の場合は側面が正五角形10枚が互い違いに噛み合う立体(正十二面体)になりますが,このように側面の五角形が正五角形になる得るのはn=5のときだけです.
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