■差分体の体積(その1)

 日本の国土をA,半径rの円板をBとして,陸地の各点にこの円板を貼り付けることによって定まる領域がA+Bである.すなわち,陸地からの距離がr以下の海の部分を陸地に加えた領域がミンコフスキー和A+Bである.今回のコラムでは,A,B,A+Bの3つの面積の関係を述べたブルン・ミンコフスキーの不等式を紹介する.

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【1】ブルン・ミンコフスキーの不等式

 冒頭では平面での場合を述べたが,一般のn次元図形に対しても不等式

  |A+B|^1/n≧|A|^1/n+|B|^1/n

が成立する(平面図形の場合はn=2).等号成立はAとBは相似の位置にあるか,またはAはBの平行移動であるときである.

 また,2つの凸図形K0,K1が与えられたとき,K0からK1への連続変形

  Kt=(1−t)K0+tK1   (0≦t≦1)

においては

  |Kt|^1/n≧(1−t)|K0|^1/n+t|K1|^1/n

が成り立つ.

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【2】凸体の点対称化

 凸体Kを原点の周りで180°回転させて得られる図形を−Kあるいはrot(K)で表す.Kに対して点対称化図形K~を

  K~=1/2(K+(−K))

で定義する.図形−Kの原点を図形Kの境界に沿って動かすときのミンコフスキー和であるが,前述した−KからKへの連続変形のt=1/2の場合であり,図形Kが四角形のときK~は八角形,Kが四面体のときK~は立方八面体状図形になる.

 このとき,

  |K|≦|K~|

が成り立つ(等号成立は−KがKの平行移動であるとき).

 また,Kが2次元図形であれば周長と直径は不変である.

  L(K)=L(K~),D(K)=D(K~)

3次元図形であれば直径は不変である.

  D(K)=D(K~)  (表面積は不変ではない)

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