■代数曲線の媒介変数表示(その2)

[a]2次曲線のパラメータ表示例

 原点を中心とする半径1の円の円周上の点を(x,y)とすれば,第3の変数θを媒介として,x=cosθ,y=sinθと表されます.θは(x,y)と(0,0),θ/2は(x,y)と(−1,0)を結ぶ直線とx軸とのなす角を表しています.さらにt=tan(θ/2)とするとtan(θ/2)=sinθ/(1+cosθ),cosθ=(1−t^2)/(1+t^2),sinθ=2t/(1+t^2)より,

  x=±(1−t^2)/(1+t^2),

  y=(2t)/(1+t^2)   (−1≦t≦1)

と表すことができます.

 単位円上のすべての有理点(座標x,yが有理数であるような点)は,x=±(1−t^2)/(1+t^2),y=(2t)/(1+t^2)とx=−1,y=0です.このように,円の有理点全体は1つの変数tによって一意化できますが,円ばかりではなく,現在では2次曲線に1つでも有理点があると実は無限に有理点があることがわかっています.2次曲線は有理点を無限のもつか,1つももたないかのどちらかです.実際,t=m/nを代入して展開すると,

  x=±(m^2−n^2)/(m^2+n^2),y=2mn/(m^2+n^2)

となります.したがって,ピタゴラス数(a^2+b^2=c^2:a,b,cは整数)の組み合わせは,a=m^2−n^2,b=2mn,c=m^2+n^2によって,すべて導き出せることがおわかり頂けることでしょう.

 なお,三角関数の有理関数の積分はt=tan(θ/2)とおくと有理関数の積分に帰着できることはほとんどの教科書に書かれていますが,うまくtanθ,cos^2θ,sin^2θだけの関数に書き表すことができる場合には,tanθ=tとおくことによって三角関数の有理関数の積分計算は格段と簡単になります.この場合,cos^2θ=1/(1+t^2),sin^2θ=t^2/(1+t^2)となりますから,tan(θ/2)=tとおいた場合に比べ,次数が約半分の有理関数になります.

[b]3次曲線のパラメータ表示例

 デカルトの正葉線x^3−3axy+y^3=0(a>0)では,y/x=t,すなわちy=txとおくことによってパラメータ表示の形に書くことができます.

  x=3at/(1+t^3),y=3at^2/(1+t^3)

この3次曲線は重根をもち,原点(0,0)が特異点になります.

 同様に,特異点をもつy^2=x^3やy^2=x^2(x+1)は楕円曲線ではありません.前者は(t^3,t^2),後者は(t^2−1,t(t^2−1))とパラメトライズできます.

[c]4次曲線のパラメータ表示例

 レムニスケートは

  x=t(t^2+1)/(1+t^4)

  y=−t(t^2−1)/(1+t^4)

のようにパラメトライズすることができます.

 以上の例のごとく,直線や2次曲線(円錐曲線)はその上の点をパラメータtの式として表せるのに対して,例えば,3次曲線x^3−3axy+y^3=c(c≠0),特異点をもたない楕円曲線y^2=x^3+ax+b(4a^3+27b^2≠0),フェルマー曲線x^n+y^n=1(n>2)はもはや初等的な関数ではパラメトライズされず,fがx,yの任意の関数である場合,陽関数表示も媒介変数表示もできるとは限りません.したがって,陰関数の描画ルーチンが必要になります.

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