■(素数)^2−1(その5)

  n±i

はガウスの整数ですが,ここではa+biではなく,n±iなる複素数を使って分解することを考えます.

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【1】ステルマー分解

 (その4)より,n^2+1=kmなるkが存在するならばqは整数になりますが,そのようなmは2と4k+1型素数の積,あるいは,n^2+1の約数として表現できることがわかります.

  m=1,2,5,10,13,17,25,26,29,34,37,41,50,53,58,61,65,73,74,82,85,89,97,・・・

 mではなくnについては,n^2+1の最大素因数pが2n以上となる正整数nをステルマー数と呼びます.n=3のとき,3^2+1=10=2・5→p=5ですから,3はステルマー数ではありません.同様に,

 n=7    7^2+1=50=2・5^2 → p=5

 n=18   18^2+1=325=5^2・13→p=13

 n=57   57^2+1=3250→p=2・5^3・13→p=13

 n=239  239^2+1=2・13^4→p=13

もステルマー数ではありません.一方,n=2のとき,2^2+1=5→p=5ですから,2はステルマー数です.

 最初の30個のステルマー数nとそれに対応する最大素因数pは,

   n   p    n   p    n    p

   1   2   15 113   28  157

   2   5   16 257   29  421

   4  17   19 181   33  109

   5  13   20 401   34   89

   6  37   22  97   35  613

   9  41   23  53   36 1297

  10 101  24 577   37  137

  11  61  25 313   39  761

  12  29   26 617   40 1601

  14 197   27  73   42  353

[1]5はステルマー数ですから,5+iのステルマー分解はそれ自身になります.

[2]70+iでは

  (70+i)(70−i)=70^2+1=4901=13^2・29

ですから,70はステルマー数ではありません.

  12±i→12^2+1=5・29

となることから,29でn^2+1が割り切れる最小のnは12です.すなわち,最初のステルマー数は12になります.

 ステルマー分解を求めるには,nがステルマー数となっている数n±iを元の数a+biに繰り返し掛けていきます.このとき,符号は対応する素数pをキャンセルできるように選びます.この例では

  (70+i)(12+i)=839+82i→×

  (70+i)(12−i)=841−58i=29(29−2i)

ですから,

  (70+i)(12−i)=29(29−2i)

   5±i→5^2+1=2・13

より,13でn^2+1が割り切れる最小のnは5です.すなわち,次のステルマー数は5ですから,

  (70+i)(12−i)(5+i)=29(29−2i)(5+i)=29(147−19i)→×

  (70+i)(12−i)(5−i)=29(29−2i)(5−i)=29(143−39i)=377(11−3i)

 同様のことを繰り返すと

  (70+i)(12−i)(5−i)(5−i)=377(11−3i)(5−i)=9802(2−i)

2はステルマー数ですから,これですべてステルマー数に対応する複素数となりました.実数の偏角はすべて0です.したがって,偏角については

  arctan(1/70)−arctan(1/12)−2arctan(1/5)=−arctan(1/2)

が成り立つことがわかります.

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