■飽和炭化水素の構造異性体数(その10)

【2】木グラフ

 グラフとは点(頂点v)とそれらを結ぶ線(辺e)とからできている1次元図形のことであるが,そのうち,閉路を含まない連結グラフのことを木(グラフ)と呼ぶ.

 炭素の原子値は4であるが,そのような制限を取り除けば,

    ・

    |

  ・−・−・

   / \

  ・   ・

も可能となる.

 これも木グラフであるから,同型でない木グラフの総数をg(k)とおくと

  位数  :1,2,3,4,5,6, 7, 8, 9, 10, 11,12,   13,・・・,k,・・・

  g(k):1,1,1,2,3,6,11,23,47,106,235,551,1301,・・・,g(k),・・・

となる.ともあれ,制限のついた飽和炭化水素の構造異性体数f(k)よりも木グラフの総数g(k)の数え上げの方がより一般的な問題であると考えられる.そこでf(k)を求める代わりにg(k)を求めてみることにする.

1857年,ケーリーは知り合いの化学者からの依頼でCkH2k+2の構造異性体の数を数えようとしていたときに多くの「木グラフ」の性質を発見した.木の性質のひとつとして,木の頂点数をv,辺数をeとすると

  v=e+1

が成り立つが,これはオイラーの定理:v−e+f=1においてf=0としたものである.すなわち,連結でありかつ閉路を含まないという必要十分条件を満たしていて,飽和炭化水素の場合,v=3k+2であるからe=3k+1で与えられるという意味にほかならない.

 位数kに対して同等でない木はいくつあるのか?・・・これがケイリーの考えた問題であり,同等でない木の総数を与える公式(ケイリーの公式)が知られている.ケイリーの公式とは「位数kの完全グラフのすべての異なる全域木の総数はk^(k-2)で与えられる」というものである.

  位数k      :1,2,3, 4,  5,   6,k

  同等でない木の総数:1,1,3,16,125,1296,k^(k-2)

[補]位数kのグラフでどの2点も隣接しているとき完全グラフという.正k角形+すべての対角線をイメージすればよく,v=k,e=kC2である.

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[1]n個の頂点を持つラベル付き木全体のなす集合の元の個数はn^(n-2)である。木とはサイクルを持たない連結なグラフ、その頂点に相異なる名前が付けられているときラベル付きという。

[2]n個の頂点を持つラベル付き単純グラフ全体のなす集合の元の個数は2^n(n-1)/2である。単純グラフとはループも多重辺も持たないものをいう。

[3]n個の頂点を持つラベル付き連結単純グラフ全体のなす集合の元の個数はlog(Σ(2^n(n-1)/2)/k!・x^k)のベキ」級数展開におけるx^nの係数のn!倍に等しい。連結=どの2頂点も道で結ぶことができるとき

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