■連分数の測度論(その6)
p(k)=log2(1+1/k)−log2(1+1/(k+1))
=log2(1+1/k(k+2))
で思い出したことがいくつかある.
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【1】nと2nの間に素数がある
n<p≦2nの間には常に1個の素数がある(1845年のベルトラン仮説を1850年,チェビシェフが証明した)ことを直接,素数定理から漸近表現を求めると
π(2x)−π(x)〜2x/ln(2x)−x/ln(x)
〜2x/(lnx+ln2)−x/lnx
〜(2xlnx−x(lnx+ln2))/lnx(lnx+ln2)
〜(xlnx−xln2))/(lnx)^2(1+ln2/lnx)
〜(x/lnx−xln2/(lnx)^2)(1−ln2/lnx)
〜x/lnx−2xln2/(lnx)^2
となる.
あるいは同じことであるが,各素数はその前の素数の2倍より小さい.
pk+1<2pk
n番目の素数は
pn〜nln(n)
であるから,漸近的に2nとn^2の間に位置する.したがって,素数は偶数よりは少ないが平方数よりは多い.
もっとよい近似では
lnx−3/2<x/π(x)<lnx−1/2
n(ln(n)+lnln(n)−3/2)<pn<n(ln(n)+lnln(n)−1/2))
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ベルトランの仮説「nと2nの間に素数がある」を利用して,タイシンガーの問題
(問) Hn=1/1+1/2+1/3+1/4+・・・+1/n≠整数
に対して,別証を与えてみましょう.
(別証)n未満のnにもっとも最も近い素数p(>n/2に必ずある:ベルトラン・チェビシェフの定理「nと2nの間に素数がある」)を考える.Pをp未満のすべての素数の積とすると,
PHn=p(1/1+1/2+1/3+・・・+1/p+・・・+1/n)
このとき,1/pは分母にpが残り,1/pは他に打ち消す項がないので整数になりそうもありません.nが素数ならもちろん整数でない.合成数でも奇数の素因子があれば分母に残る.これはおおざっぱですが,これを精密化すれば完全な証明になりそうです.
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【2】オイラーの定数
Hn=1/1+1/2+1/3+1/4+・・・+1/n
と定義します.(n>1ならばHnは整数にはなりません.)
nを無限大にしたとき,調和級数
H∞=1/1+1/2+1/3+1/4+・・・
は発散しますが,そのn次部分和Hnは離散的な世界で連続関数lnnに対応するものであり,自然対数は双曲線y=1/xの下の面積として定義できます.
したがって,双曲線y=1/xを上と下から棒グラフではさんで近似することにより,lognとlogn+1の間に押し込まれまれることがわかります(∵∫1/xdx=logx).したがって,Hn とlognの比{Hn /logn}は
Hn /logn→1 (n→∞)
です.
一方,Hn とlognの差{Hn −logn}は確定した極限値γに収束します.
Hn −logn→γ (n→∞:Hn =logn+γ+O(1/n))
Hn =logn+γ+o(1)
この極限値はオイラーの定数として知られており,約0.57722になります.オイラーの定数の比較的よい近似値は4/7で,さらによい近似値は41/71で与えられます.Hn は上限と下限の間の約58%のところにあることがわかりましたが,今日に至るまで,オイラーの定数の値は有理数とも無理数ともわかっていません.おそらく,超越数なのでしょう.
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以上より,
Hn〜logn+γ
と近似できることがわかりましたが,より精度を高めたければ
Hn〜logn+γ+1/2n
Hn〜logn+γ+1/2n−1/12n(n+1)
Hn〜logn+γ+1/2n−1/12n(n+1)−1/12n(n+1)(n+2)
Hn〜logn+γ+1/2n−1/12n(n+1)−1/12n(n+1)(n+2)−19/120n(n+1)(n+2)(n+3)
といった級数展開が知られています.
(問)P=1/1+1/3+1/5+1/7+・・・+1/(2n−1)の漸近表現を求めよ.
(答え)
Hn〜logn+γ
を利用すると
P=(1/1+1/2+・・・+1/2n)−2(1/1+1/2+・・・+1/n)
=H2n−2Hn=log2n−1/2logn+γ/2
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