■ボロノイ細胞と平行多面体(その21)

  [参]中村義作「数理パズル」中公新書427

には展開図が平面充填五角形になる四面体も紹介されているのだが,これは断面が正三角形となる三角柱から展開図が五角形になるダブル充填四面体を求めたものである.

 この四面体を「中村の三角錐」と呼ぶことにするが,中村の三角錐は正三角形や正六角形が平面を隙間なく敷き詰めるように,空間を隙間なく埋めつくすことができる.

 それでは正方形が平面を隙間なく敷き詰めるように,断面が直角二等辺三角形となる三角柱から展開図が五角形になるダブル充填四面体を求めることはできるだろうか?

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【1】展開図が五角形になるための条件

 直角二等辺三角形の1辺の長さをa,a√2とし,頂点の位置を(0,0),(a/√2,a/√2),(−a/√2,a/√2)にとる.そして,四面体の4頂点の座標を

  A(−a/√2,a/√2,1)

  B(0,0,0)

  C(a/√2,a/√2,−1)

  D(0,0,z)

とおく.

 これより,四面体の各面は三辺の長さがそれぞれ

  (a^2+(z−1)^2)^1/2,(a^2+1)^1/2,z

  z,(a^2+1)^1/2,(a^2+(z+1)^2)^1/2

  (a^2+(z−1)^2)^1/2,(a^2+(z+1)^2)^1/2,(a^2+(z−1)^2)^1/2

  (a^2+(z−1)^2)^1/2,(a^2+1)^1/2,(a^2+1)^1/2

の三角形となる.

 ここで,この多面体の対称性を確保するために,2枚の二等辺三角形をもつことを要請する.すなわち,AC=ADより,

  2a^2+4=a^2+(z−1)^2

  z=(a^2+4)^1/2+1

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【2】展開図が平面充填図形になるための条件

 それぞれの三角形の内角のひとつをθ,α,β,γ

  cosθ=(2a^2+(z−1)^2+1−z^2)/2(a^2+(z−1)^2)^1/2(a^2+1)^1/2

  cosα=(2a^2+(z+1)^2+1−z^2)/2(a^2+1)^1/2(a^2+(z+1)^2)^1/2

  cosβ=(a^2+(z+1)^2)/2(a^2+(z+1)^2)^1/2(a^2+(z−1)^2)^1/2

  cosγ=(a^2+(z−1)^2)/2(a^2+(z−1)^2)^1/2(a^2+1)^1/2

とおくと,

  θ+α+β+γ=π

となるようなaを求めればよい.

 しかしながら,a=1.6付近で急激な変化が起こるため,この数値解を求めることは困難であった.

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