工藤の三角錐は面白い性質をもっている.8個組み合わせるともとと同じ形で2倍(体積は8倍)の一回り大きい四面体になる.3個組み合わせると三角柱ができる.この三角柱を垂直に切った断面は正三角形になる.
[参]中村義作「数理パズル」中公新書427
には展開図が平面充填五角形になる四面体も紹介されているのだが,これはどのようにして発想されたものなのだろうか.
今回のコラムでは,断面が正三角形となる三角柱から逆に展開図が五角形になるダブル充填四面体を求めてみることにしたい.
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【1】展開図が五角形になるための条件
正三角形の1辺の長さをaとし,頂点の位置を(0,0),(a/2,a√3/2),(−a/2,a√3/2)にとる.
ダブル充填四面体
[1]v=3:工藤の三角錐(二等辺三角形)
[2]v=4:工藤の三角錐(平行四辺形)
[3]v=5:?
[4]v=6:鼈臑(平行六辺形)
の展開図の基本形は平行六辺形であるから,展開図が五角形になるためには展開図の3点が同一直線上にあることが必要となる.
そこで四面体の3頂点の座標を
A(−a/2,a√3/2,1)
B(0,0,0)
C(a/2,a√3/2,−1)
とおいても一般性は失われない.
また,工藤の三角錐は4枚,鼈臑は2枚の二等辺三角形をもつ.展開図が平面充填五角形になる空間充填四面体にも2枚の二等辺三角形をもたせるために
D(0,0,3)
とおく.
これより,四面体の各面は三辺の長さがそれぞれ
(a^2+4)^1/2,(a^2+1)^1/2,3
3,(a^2+1)^1/2,(a^2+16)^1/2
(a^2+4)^1/2,(a^2+16)^1/2,(a^2+4)^1/2
(a^2+4)^1/2,(a^2+1)^1/2,(a^2+)^1/2
の三角形となる.
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【2】展開図が平面充填図形になるための条件
展開図が平面充填図形になるためには,五角形を2個組み合わせると3組の対辺がすべて平行な六角形になることが必要である.
そこで,それぞれの三角形の内角のひとつをθ,α,β,γ
cosθ=(2a^2−4)/2(a^2+4)^1/2(a^2+1)^1/2
cosα=(2a^2+8)/2(a^2+1)^1/2(a^2+16)^1/2
cosβ=(a^2+16)/2(a^2+4)^1/2(a^2+16)^1/2
cosγ=(a^2+4)/2(a^2+4)^1/2(a^2+1)^1/2
とおくと,
θ+α+β+γ=π
となるようなaを求めればよい.
ここまでくればあとは数値計算の問題で,計算結果は
a=3.93737
θ=41.179°
α=31.2016°
β=50.5451°
γ=57.0744°
となった.
辺の長さは
(a^2+1)^1/2=4.06237
(a^2+4)^1/2=4.4162
(a^2+16)^1/2=5.61274
また,二面角を求めると,
38.1109°,51.8892°,60°
66.9084°,90°,113.092°
で,2πの整数分の1(60°,90°)が含まれている.
38.1109°+51.8892°=90°
66.9084°+113.092°=180°
はそれぞれ直角,二直角の補角をなす.
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