立方体の2等分体である塹堵を斜めに切ると陽馬と鼈臑(べつどう)へ分解することができる.すなわち,陽馬を切り取った残りが鼈臑であるが,鼈臑は陽馬を2分割することによっても得られる.陽馬を2分割してできる鼈臑は一対の鏡像体をなす.→コラム「陽馬の木工製作(その2)」
また,立方体の中心を通るように中心から放射状に6分割する.それを正方形面の対角線で4分割した1/24立方体は左右対称であるが,それをさらに2分割した1/48立方体は一方が他方の鏡像体になっていて合同にはならない.この1/48立方体は1/6立方体である鼈臑と相似(相似比1:2)であるから,鏡像体を組み換えると陽馬になる.
一方,コラム「ボロノイ細胞と平行多面体(その14)」では中川の六面体(1/24切頂八面体)の2分割体を紹介した.中川六面体の2分割体は立方体・菱形12面体・切頂八面体に対する三重の空間充填図形となる.
鼈臑と同様に,中川六面体の2分割体にも1対の鏡像体がある.陽馬・1/24立方体・中川六面体は鏡像体をもたない終着点であるから「原子」,鼈臑・1/48立方体・中川六面体の2分割体などの鏡像体は「原子」というよりも正反の「素粒子」に例えることができる.今回のコラムでは素粒子の組み換えに関する中川宏さんの報告を紹介したい.
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【1】鼈臑→1/24立方体
1対の鼈臑で陽馬(四角錐),それにもうひとつの鼈臑を組み合わせると塹堵(ぜんと)になる.したがって,3対の鼈臑で立方体ができる.
一方,1対の鼈臑を鋭角三角形の面で接合させると,陽馬とは異なる多面体にも組み換えることができる.この組み換えで2/6立方体となる三角錐ができるが,この三角錐は1/24立方体と相似(相似比1:2),2対の鼈臑で工藤の三角錐(2/24立方体)と相似形になる.
次に鼈臑を2分割してみることにする.1対の鏡像体から合同な三角錐が4つできる.この三角錐は1/12立方体となるから,それを2分割(1/24立方体)し,さらに2分割すると1/48立方体へ分解することができる.これは相似比1:2の小鼈臑である.したがって,これらの分解操作は無限に繰り返すサイクルをなすことがわかる.
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【2】中川六面体の2分割体→鼈臑
中川六面体の2分割体は三重の空間充填図形である.すなわち,6対の中川六面体の2分割体で立方体ができる.48対で大立方体(相似比1:2)になる.24対で切頂八面体,96対で菱形12面体ができることは容易に理解されることである.
この詳細をみていくことにするが,中川六面体の2分割体1対で中川六面体になるものをα接合,それを立体蝶番返しして台形の面で接合させたものをβ接合と呼ぶことにすると
立方体 菱形12面体 切頂八面体
α接合 × ○ ○
β接合 ○ × ○
鼈臑の場合と同様,もっと面白い組み合わせがある.中川六面体の2分割体の1対でなく,同じもの2個を凧形の面で接合させると鼈臑ができる(γ接合).したがって,2対で陽馬,6対(3陽馬)で立方体,48対(24陽馬)で大立方体,さらに8対(4陽馬)で大立方体の6分割体である四角錐となるから,菱形12面体も作ることができるのである.
立方体 菱形12面体 切頂八面体
γ接合 ○ ○ ×
以上をまとめると,
立方体 菱形12面体 切頂八面体
α接合 × ○ ○
β接合 ○ × ○
γ接合 ○ ○ ×
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