■整数の積(その12)
(その10)の続きである.
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【1】エルミートの不等式(正定値n元2次形式の最小値の上界)
ガウスは正定値2元2次形式
P=ax^2+2bxy+cy^2 (x,yは整数)
に座標軸のなす角の余弦がb/√acのとき,ある点Pと原点との距離の2乗であるという幾何学的解釈を与えている.これにより全平面は平行四辺形の格子に分割され,D=|b^2−ac|は基本平行四辺形の面積の2乗に等しくなる.3元2次形式の場合は,平行四辺形は平行六面体に置き換えられる.
P=Σaijxixj (aji=aij)
で与えられた判別式Dをもつ正定値n元2次形式Pにおいて,係数を連続的に変化させると最小値もまた連続的に変化する.エルミートは正定値n元2次形式の最小値の上界が
(4/3)^(n-1)/2|A|^1/n (エルミートの不等式)
であることを示した.
エルミートはさらに2(|A|/(n+1))^1/nで置き換えられるであろうと予想したが,コルキンとゾロタレフはこれよりも最小上界に近い他の上界を得ている.
n=2 → (4|A|/3)^1/2
n=3 → (2|A|)^1/3
n=4 → (4|A|)^1/4
n=5 → (8|A|)^1/5
その後,ブリヒフェルトが
n=6 → (3|A|/64)^1/6
n=7 → (64|A|)^1/7
n=8 → (2|A|)^1/8
を証明した.
[補]極大格子
n ルート 最小距離 球充填密度
1 1 1
2 A2 4√(4/3) =1.075 0.906
3 A3 6√2 =1.122 0.740
4 D4 8√4 =1.189 0.619
5 D5 10√8 =1.231 0.465
6 E6 12√(64/3)=1.290 0.373
7 E7 14√64 =1.346 0.295
8 E8 √2 =1.414 0.254
[補]最密球充填
n ルート 球充填密度
2 A2 π/2√3=0.906(ラグランジュ1773,ガウス1831)
3 A3 π/3√2=0.740(ガウス1831)
4 D4 π^2/16=0.617(Korkine,Zolotareff,1872)
5 D5 π^2/15√2=0.465(Korkine,Zolotareff,1877)
6 E6 π^3/48√3=0.373(Blichfeldt,1925)
7 E7 π^3/105=0.295(Blichfeldt,1926)
8 E8 π^4/384=0.254(Blichfeldt,1934)
[補]最疎球被覆
n ルート 球被覆密度
2 A2~ 2π/√27=1.209(Kershner,1939)
3 A3~ 5√5π/24=1.464(Bambah,1954)
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