■整数の積(その7)

【1】オイラーの幸運数

 x^2+x+41のxに0,1,2,・・・,39を入れてできる数はすべて素数である(オイラー,1772年).

 同様に,x^2+x+17のxに0,1,2,・・・,15を入れてできる数はすべて素数である.

 たとえば,15=3・5(合成数)に対して,x^2+x+15はx=3,x=5のとき,合成数となるので,以下,pを素数として,

  x^2+x+p

を考える.

 実は,x^2+x+pのxに0,1,2,・・・,p−2を入れてできる数がすべて素数であるのは,p=2,3,5,11,17,41の6つ以外にない(1967年).この6つをオイラーの幸運数という.

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【2】ベイカー・スタークの定理

 オイラーの2次多項式において,最初のq−1個がすべて素数となるような素数q(>41)は存在するのでしょうか.もし存在するならば,そのようなqは無限にあるのでしょうか.あるいは,有限個ならば最大のqはいくつになるのでしょうか.

 1966年,ベイカーとスタークは独立に類数1の虚2次体Q(√d)すなわち(d<0,dは平方因子をもたない)なる2次体をすべて決定したのですが,それによると,

  −d=1,2,3,7,11,19,43,67,163

 したがって,虚2次体Q(√1−4q)が類数1をもつのは,

  4q−1=7,11,19,43,67,163

すなわち,

  「qが素数で,2,3,5,11,17,41に限る.」

というものです.

 もし,そのような素数が無限に多く存在すれば,任意の長さの素数列を生成することができるのですが,ベイカー・スタークの定理はこれが成立しないことを示していて,

  fq(x)=x^2+x+41

が最も長く連続した整数点において素数値をとる多項式であるというわけです.

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 2次方程式

  x^2+x+41=0

の解は

  x=1/2(−1±√−163)

であり,虚2次体Q(√−163)の理論と深く関係しているのですが,この不思議な性質も類数1に関するラビノヴィッチの定理から説明されます.

 もうひとつの注目すべき事実は

  x=exp(π√d)

が数値的にとても整数に近くなりうるというものです.

  exp(π√163)=262537412640768743.99999999999925007・・・

  exp(π√163)=640320^3+744−ε

  ε=7.5×10^-13

 この整数はモジュラ関数

  j(z)=exp(−2iπz)+744+196884exp(2iπz)+・・・

を用いて,

  744−j((1+i√163)/2)

で与えられる.

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