nが奇数のとき,n−1角形の辺の中点の円弧の中心をおいた円弧n−1角形をルーローのn−1角形と呼ぶことにする.(その42)(その44)ではルーローの四角形が正五角形の内転形であるかどうかを検証してきた.ルーローの四角形を正五角形に内接させながら回転させてみると,目測ではぴったり内転しているようにみえるのだが,計算上はそうなってはいないことが判明した.
ルーローの偶数角形は曲率半径か円弧の中心角かどちらか一方が決まれば一意に定まるので,中心角をπ/(n−1)やπ/nと変更してみてもやはり内転形にはならない.微妙なところで食い違っている「擬内転形」なのである.
この問題についてはまとまった時間がとれるときに再考することにしたのだが,ルーロー曲線については
(1)nが偶数のとき(内転形)
円弧の中心はn−1角形の頂点
n=4 → ルーローの三角形
(2)nが奇数のとき,
円弧の中心はn−1角形の辺の中点(擬内転形)
n=3 → 藤原・掛谷の二角形(内転形),ルーローの二角形(内転形)
(3)中心の軌跡は楕円の弧の組合せ
円もどき (n=3を除く)
と訂正しておきたい.
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【雑感】
「デューラーの八面体」のことが頭の中をよぎった.デューラーの八面体は彼の有名な版画作品「メランコリアI」(1514年製作)に登場する切頂菱面体のことである.そして,頂角72°の菱形六面体を黄金比切頂してできるデューラーの八面体が正五角形のように無限に続く相似な八面体の入れ子構造を有するというのが榎本和子さんの説であった.
榎本さんの結果は大きな関心を呼び,NHKの「日曜美術館」や「クローズアップ現代」でも取り上げられたらしい.ところが,デューラーの八面体の榎本説には無限入れ子に若干のずれがあったのである.
釜石南高校の宮本次郎先生が発見された定理「同じ菱形6枚でできる任意の菱形六面体について,2つの尖っている頂点に集まる辺をt:(1−t)に内分する点で切頂してできる八面体に,相似な菱形六面体を180°回転させて内接させるための必要十分条件は
t=3/5
である」を使えば,
3/5≒(√5−1)/2 (0.6≒0.618)
とかなり近いであるし,角度に直すと
72.5425°≒72°
となって1度未満のずれであることから,目測では認識できないほどの小さな誤差なのである.
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