(その16)では回転子とつねに相対的位置が不変に保たれた点の運動(ペリトロコイド曲線)について述べましたが,今回のコラムではペリトロコイド曲線の次数やその性質について調べてみます.
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【1】ペリトロコイド曲線の接線極座標表示
公転に対する自転の向きによって,ペリトロコイド曲線は
x=Rcos(θ+γ)+acos(n−1)θ
y=−Rsin(θ+γ)−asin(n−1)θ
または
x=Rcos(−θ+γ)+acos(n−1)θ
y=−Rsin(−θ+γ)−asin(n−1)θ
で表されます.
xsinθ−ycosθ=p(θ)
に代入すると,接線極座標における方程式は
p(θ)=Rsin(2θ+γ)+asinnθ (黄)
または
p(θ)=Rsinγ+asinnθ (緑)
となります.
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【2】p(θ)=Rsinγ+asinnθ
(その36)で解説したフルヴィッツ・藤原曲線の接線極座標における方程式は,
p(θ)=r+asin(n−1)θ
r≧{(n−1)^2−1}a
と書くことができます.
このことから,
p(θ)=Rsinγ+asinnθ
はフルヴィッツ・藤原曲線そのものであり,正n+1角形の内転形であることがわかります.したがって,その次数は2(n+1)次ということになります.
フルヴィッツ・藤原曲線の平行曲線もまた内転形となるのですが,同じ凸n角形のすべての内転形の周長は等しいことより,正n角形の内接円の半径をrとして,中心軌道の軌道半径を
p(θ)=r+asin(n−1)θ
a=r/{(n−1)^2−1}
で定めれば面積最小のフルヴィッツ・藤原曲線が求められます.
p(θ)=Rsinγ+asinnθ
の場合,
r=(n^2−1)a
とはなっていないので,面積最小のフルヴィッツ・藤原曲線ではなく,その平行曲線ということになります.
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【3】p(θ)=Rsin(2θ+γ)+asinnθ
p(θ)=Rsinγ+asinnθ
は概n角形の曲線となりますが,それに対して
p(θ)=Rsin(2θ+γ)+asinnθ
は概n−2角形を描きます.(その19)では,nサイクルロータリーエンジンのアニメを掲げましたが,百聞は一見に如かず,いずれも概n−2角形のなかで概n−1角形が回転する様子が描かれています.
もちろん概n−2角形の2はRsin(2θ+γ)に由来することは確かです.概n−1角形を内転させることができて,この曲線自体もLCM(3,n+1)角形の内転形になっているのでしょう.
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p(θ)=Rsin2θ+asinnθ
として,実際に次数を求めてみることにしましょう.
[1]n=3
r=2Rxy/r^2+a(−4y^3/r^3+3y/r)
r^4=2Rxyr+a(−4y^3+3yr^2)
(r^4−a(−4y^3+3yr^2))^2=(2Rxy)^2r^2 → 8次式
[2]n=4
r=2Rxy/r^2+a(−8xy^3/r^4+4xy/r^2)
r^5=2Rxyr^2+a(−8xy^3+4xyr^2)
r^10=(2Rxyr^2+a(−8xy^3+4xyr^2))^2 → 10次式
一般に,次数は2(n+1)次式となりますが,この点については
p(θ)=Rsinγ+asinnθ
の場合と同じです.
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