■プラトンの立体

 正多面体について第1の問題は何かと問われたならば,それは正多面体は何種類あるかという問題だろう.その答えが5種類になることはユークリッド原論に載っているが,その回答を与えたのが誰かは実はよくわかっていない.

 プラトンは紀元前360年の著作「ティマイオス」のなかで,5つの正多面体について述べている.プラトンはこれらの立体を発見したのは前の時代のピタゴラス派の数学者たちと述べているが,正多面体がこの5つで尽くされるという事実を紹介している.その結果これらの立体は「プラトンの立体」と呼ばれるようになった.

 オイラーの多面体公式のずっと前の時代のことであるから,ユークリッドの論法は次の通りである.

[1]正三角形を用いるならば,ひとつの頂点にそれを3個,4個,5個集めることができる(6個ならば平角になってしまう).

[2]正方形を用いるならば,ひとつの頂点にそれを3個集めることができる(4個ならば平角になってしまう).

[3]正五角形を用いるならば,ひとつの頂点にそれを3個集めることができる.

[4]正六角形を用いるならば3個で平角になってしまう(六角形より多くの辺をもつ正多角形を用いることはできない).

 これら5つのケースがそれぞれ

[1]正四面体,正八面体,正二十面体

[2]立方体

[3]正十二面体

に対応しているため,ほかにはないといっているわけである.

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【1】シュレーフリ記号

 正p角形をひとつの頂点にq個集まる正多面体を{p,q}で表す.

[1]正四面体,正八面体,正二十面体

[2]立方体

[3]正十二面体

[1]{3,3},{3,4},{3,5}

[2]{4,3}

[3]{5,3}

で表すことができる.これをシュレーフリ記号という.

 シュレーフリは,これを一般化してn−1次元の正多面体{p1,p2,・・・,pn-2}が3次元低い構成要素上にpn-1個ずつ会するようなn次元多胞体を{p1,p2,・・・,pn-2,pn-1}で表した.たとえば,{p,q,r}は{p.q}が辺の回りにr個ずつ集まってできる4次元正多胞体という意味である.

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【2】4次元正多胞体

 4次元以上の正多細体を初めて深く研究した数学者は,19世紀,スイスのシュレーフリをいわれている.シュレーフリは結晶群の研究者でもあった.

 3次元正多面体の二面角δは

 {3,3}→cosδ=1/3  (δ=70.5°)

 {3,4}→cosδ=−1/3  (δ=109.5°)

 {3,5}→cosδ=−√5/3  (δ=138.2°)

 {4,3}→cosδ=0  (δ=90°)

 {5,3}→cosδ=−√5/5  (δ=116.6°)

である.

 3次元同様,4次元正多胞体の候補となるのは,二面角が120°未満であるあるから,

[1]{3,3}を用いるならば,ひとつの辺にそれを3個,4個,5個集めることができる.→{3,3,3},(3,3,4},{3,3,5}

[2]{3,4}を用いるならば,ひとつの辺にそれを3個集めることができる.→{3,4,3}

[3]{4,3}を用いるならば,ひとつの辺にそれを3個集めることができる.→{4,3,3}

[3]{5,3}を用いるならば,ひとつの辺にそれを3個集めることができる.→{5,3,3}

 4次元正多胞体は最大でも6つしかないことになる.

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【3】5次元正多胞体

 4次元正多胞体の二胞角δは

 {3,3,3}→cosδ=1/4  (δ=75.5°)

 {3,3,4}→cosδ=−1/2  (δ=120°)

 {3,3,5}→cosδ=−(1+3√5)/8  (δ=164.5°)

 {3,4,3}→cosδ=−1/2  (δ=120°)

 {4,3,3}→cosδ=0  (δ=90°)

 {5,3,3}→cosδ=−(1+√5)/4  (δ=144°)

である.

 5次元正多胞体の候補となるのは,二胞角が120°未満であるあるから,

[1]{3,3,3}を用いるならば,ひとつの面にそれを3個,4個集めることができる.→{3,3,3,3},(3,3,3,4}

[2]{4,3,3}を用いるならば,ひとつの面にそれを3個集めることができる.→{4,3,3}

 5次元正多胞体は最大でも3つしかないことになる.

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【4】n(≧5)次元正多胞体

 n次元正多胞体の二胞角δは

 {3,3,,・・,3}→cosδ=1/n  (75.5°<δ<90°)

 {3,3,,・・,4}→cosδ=−(n−2)/n  (120°<δ<180°)

 {4,3,,・・,3}→cosδ=0  (δ=90°)

である.

 n次元正多胞体の候補となるのは,二胞角が120°未満であるあるから,

[1]{3,3,・・,3}を用いるならば,ひとつのn−3次元面にそれを3個集めることができる.→{3,3,・・,3,3},(3,3,・・,33,4}

[2]{4,3,・・,3}を用いるならば,ひとつのn−3次元面にそれを3個集めることができる.→{4,3,・・3,3}

 n(≧5)次元正多胞体は最大でも3つしかないことになる.

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