■エラトステネスのふるい(その3)
【1】リュカ数列と素数判定法
1,1,2,3,5,8,・・・
この数列にフィボナッチ(13世紀のイタリアの数学者でピサのレオナルドとしても知られる)の名を冠したのはフランスの数学者リュカで,ハノイの塔の名で知られる2進法のパズルも1883年にリュカによって考案されたものです.
初項1,第2項3のフィボナッチ数列
1,3,4,7,11,18,・・・
は彼にちなんでリュカ数列と呼ばれています(1877年).リュカ数列の一般項Lnは,
Ln ={(1+√5)/2}^n+{(1−√5)/2}^n
={φ^n+(−1/φ)^n}
(L0=2:φ=(1+√5)/2)
で表され,Ln=Fn-1+Fn+1の関係があります.リュカ数列はフィボナッチ数列と同じ漸化式をもち,連続する2つの項の比は黄金比に近づきます.
m Ln の周期 m Ln の周期
1 1 9 24
2 3 10 12*
3 8 11 10
4 6 12 24
5 4* 100 60*
6 24 1000 300*
7 16
8 12
リュカ数にはフィボナッチ数とは別の周期性が現れます.フィボナッチ数と異なるところに*印を付けておきました.とはいっても,リュカ数の周期とフィボナッチ数の周期は全部ではないにしても,ほとんどが一致します.
両者の決定的な違いは,フィボナッチ数の循環節には必ず0が現れるのに対して,リュカ数のm=5やm=8の循環節には0が出てこないということです.これはリュカ数が5や8では決して割り切れないということを意味しています.もちろん5と8の倍数でも割れません.フィボナッチ数では任意の自然数mに対して,必ず割り切れるFnが存在します.
また,フィボナッチ数とリュカ数の性質は,整除性という点でも大分様子が違っています.2の倍数は3項ごとに現れる,3の倍数は4項ごとに現れるなどは似ていますが,5の倍数や8の倍数は出てきません.フィボナッチ数がきれいな規則性に従って並んでいるのに対し,リュカ数では1,3から始めて前の2項を加えるという規則を多少変えただけで,そうはならないのです.
リュカ数の整除性をまとめると
(1)素数pに対して
Lp=1 (modp)
(2)奇素数(p≠5)に対して
p=±1(mod5)→Lp-1=+2(modp)
p=±2(mod5)→Lp+1=−2(modp)
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2n −1の形の数が素数であるためにはnが素数であることが必要条件です.一方,2^n+1の形が素数であるためにはn=2^mの形であることが必要です.しかし,このことは十分条件ではなく,指数nがどんな数のとき2^n−1,2^n+1が素数になるかはいまだに解決されていません.
添字に2^nをもつリュカ数列{L2^n},すなわち,3,7,47,2207,4870847,・・・では,漸化式L2^(n+1)=(L2^n)^2−2が成り立ちますが,この漸化式とフェルマーの小定理(1640年)
「もしpが素数であれば,任意の整数aに関してa^p−aはpの倍数である.」を応用した素数判定法がリュカテストです.
リュカはフィボナッチ数列,リュカ数列を用いてメルセンヌ数(2^n−1)が素数であるかどうかを判定し,(2^127−1)が素数であることを示しています(1876年).この数は12番目のメルセンヌ素数で,1952年の13番目(2^521−1)からはコンピュータによる発見ですから,コンピュータを使わずに見つけられた最大のメルセンヌ素数になっていて,わかっている最大の素数として最長不倒記録を保ち続けました.
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