■円の正方形化
【1】ヒポクラテスの定理
ピタゴラスの定理の応用として,正方形の替わりに半円を考えます.すると,直角三角形の面積は直角三角形の辺上に描かれた2つの月形の面積の和に等しいというものがあることはご存知でしょう.この結果は「ヒポクラテスの定理」あるいは「ヒポクラテスの三日月」と呼ばれるのですが,非直線図形と直線図形の大きさの間に成り立つ等式としてなかなかの深みが感じれらます.
三日月の面積が直角三角形の面積に等しくなったので,彼はギリシア三大問題である円積問題(円と等しい面積の正方形を定規とコンパスで作図する)を解決できたと思いこんだようです.
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【2】円積問題(円の正方形化)
円の正方形化問題(円積問題),すなわち,定規とコンパスだけで円と等積な正方形を作図することはギリシャの3大作図問題の1つとして有名なものですが,実は19世紀になってから作図不能であることが証明されています.
円積問題は2次方程式:x^2−π=0に帰着しますが,√πがコンパスと定規で作図できたとすると,その平方であるπも同様に作図可能ということになります.しかし,πは超越数ですから√πも超越数なのです.したがって,√πは代数方程式の解とはなりえず,円積問題も作図不能となるのです.
この問題をn次元に拡張してみましょう.半径1のn次元単位超球の体積は
Vn=π^(n/2)/Γ(n/2+1)=π^(n/2)/(n/2)!
と書けます.V1=2(直径),V2=π(面積),V3=4π/3(体積)はご存知でしょう.4次元から6次元までも具体的に書けば,
V4=π^2/2,V5=8π^2/15,V6=π^3/6
という具合に,πのべき乗は偶数次元になるたびに1つあがります.
このことから,n次元の円積問題はn次方程式:x^n−π^(n/2)/Γ(n/2+1)に帰着されることになり,n次元定規とn次元コンパスを用いたとしても作図は不能と考えられます.
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