■レムニスケート積分・再考
【1】レムニスケートのn等分と次数n^2の方程式
sl(3u)=sl(2u+u)
sl(5u)=sl(4u+u)
sl(nu),n≧3をsl(u)の関数として表すことは大層複雑である.
2008年にコラム「楕円積分の加法定理」シリーズで検討した際は,畏友・阪本ひろむ氏にお願いしてMathematicaで展開してもらったところ,言葉が一切入らない数式が数ページにもおよんだ.Mathematicaでは5等分点の計算でもメモリ不足になってしまった.sl(5u)=sl(4u+u)=1をsl(5u)=sl(3u+2u)=1と分割の仕方を変えて計算してみても,メモリ不足はsl(5u)の展開ではなく,sl(5u)=1の方程式を解くところでおきているので,どうしても5等分点は得られなかったのである.もちろん,手計算を断念せざるを得なかった代物である.
しかし,うまい方法をとると,次数n^2の方程式が登場する.たとえば,s=sl(2ω/5)とおくと,sl(5u)の乗法公式により,sは
(5−2s^4+s^8)(1−12s^4−26s^8+52s^12+s^16)=0
すなわち,24次方程式
5−62s^4−105s^8+300s^12−125s^16+50s^20+24s^24=0
の根になるが,因数(s−1)で割り切れることを考慮すると25次方程式が得られるというわけである.
これは本質的にはs^4に関する2次と4次の方程式である.
1−12s^4−26s^8+52s^12+s^16=0
の根として,
{−13+6√5−2(85−38√5)^1/2}^1/4=0.52047
となった.
うまい方法とは何か.一体どうなっているのだろうか?
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【2】理由が知りたい
その理由が知りたいところであるが,
http://www.juen.ac.jp/math/nakagawa/ellfunc.pdf
に解答が書かれてあった.
たとえば,3倍角の公式
sl(3u)=sl(u)(3−6sl^4(u)−sl^8(u))/(1+6sl^4(u)−3sl^8(u))
u=2ω/3とおくと,sl(3u)=0であるから,
3−6sl^4(u)−sl^8(u)=0
を満たす.この方程式の実根は
sl(u)=(2√3−3)^1/4
である.
一般に
[1]nが奇数のとき
sl(nu)=sl(u)Pn(sl^4(u))/Qn(sl^4(u))
Qn+1(x)=Qn-1(x){Qn(x)^2+xPn(x)^2}
Pn+1(x)=2Pn(x)Qn(x)Qn-1(x)−Pn-1(x){Qn(x)^2+xPn(x)^2}
[2]nが偶数のとき
sl(nu)=sl(u)sl’(u)Pn(sl^4(u))/Qn(sl^4(u))
Qn+1(x)=Qn-1(x){Qn(x)^2+x(1−x)Pn(x)^2}
Pn+1(x)=2(1−x)Pn(x)Qn(x)Qn-1(x)−Pn-1(x){Qn(x)^2+x(1−x)Pn(x)^2}
さらに,Qn(0)=1が成り立つ.
これより,
P4(x)=4(1+x)(1−6x+x^2)
P5(x)=(5−2x+x^2)(1−12x−26x^2+52x^3+x^4)
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【3】雑感
レムニスケートサインを分数の形にして,分母と分子に分けてかつ漸化式表示すると,おおきなベネフィットが得られることがわかった.
私はsl(nu)が有理関数になるとは思っていなかったが,有理関数であれば,sl(nu)=0であろうがsl(nu)=1であろうが,計算の難易度には差がないことになる.
(5−2s^4+s^8)(1−12s^4−26s^8+52s^12+s^16)=0
はこういうことだったのである.これでn>5についても,方程式の次数が分かるのでガウスの主張の是非がたやすく確かめられたことになる.
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