■爆縮レンズ(その2)
軍事技術オタクのK氏が爆縮レンズについて教えてくれた.爆縮レンズの爆薬は切頂20面体(サッカーボール)の32個の面に配置するが最適であると計算されているようだ.切頂20面体では
[1]中心から正五角形面までの距離
H0=(2+τ^4)/2√(τ√5)=2.32744
[2]中心から正六角形面までの距離
H2=τ^2√3/2=2.26728
と計算される.
wikipediaのファットマン(長崎に投下されたプルトニウム型原爆)の図を見て欲しい.リトルボーイ(広島に投下されたウラン型原爆)にはこのような32面体構造はみられない.
===================================
【1】切頂20面体の計量
正20面体の各辺を3等分したところで切頂すると,正五角形と正六角形で囲まれた図形ができる.これがサッカーボールであるが,その体積を求めてみよう.
必要ならば1辺の長さ1の体積
正20面体:5τ^2/6=(15+5√5)/12
正12面体:τ^4√5/2=(15+7√5)/4
を既知としてもよい.
正20面体が正12面体の正五角形面の上に五角錐を載せたものであれば計算は簡単であるが,そううまくはいかないものである.そこで,奥の手をだそう.
コラム「単純リー環を使った面数数え上げ(その142)」のように,正20面体の場合,p=3,q=5,h=10を代入すると
P0(0,0,0)
P1(1,0,0)
P2(1,√(1/3),0)
P3(1,√(1/3),(√5+1)/√3(√5−1))
となって,
P0(0,0,0)
P1(1,0,0)
P2(1,tanθ,0)=(1,√(1/3),0)
P3(1,tanθ,τ^2/2cosθ)=(1,√(1/3),τ^2/√3)
と一致する.
a1=1,a2=√(1/3),a3=τ^2/√3
サッカーボールは,正20面体系{3,5}(110)であるから,
xj/aj=yj,y0=1,yn=0(xn=0)
とおく.
(yj-1−yj)/(1/aj-1^2+1/aj^2)^1/2=(yj−yj+1)/(1/aj^2+1/aj+1^2)^1/2
を計算して
1−y1=(y1−y2)/√4=L
(y2−y3)/√(3+3/τ^4)=0→y2=y3=0,y1=2/3(辺の三等分点),L=1/3
PnP0に垂直なn次元超平面が点Qを通るのだが,原点をPnに移した方が紛らわしくないので
a=(−a1,−a2,・・・,−an)
q=(x1−a1,x2−a2,x3−a3,・・・,xn−an)
とすると,この超平面をa・(x−q)=0,a・x=a・q=cで表すと
c0=−(a1x1+・・・+anxn)+(a1^2+・・・+an^2)
c0=−(a1^2y1+・・・+an^2yn)+(a1^2+・・・+an^2)
h0=|c0|/‖d0‖,‖d0‖=(a1^2+・・・+an^2)^1/2
c0=a1^2+a2^2+a3^2−a1^2y1=1+1/3+τ^4/3−2/3
d0=(1+1/3+τ^4/3)^1/2=(4/3+τ^4/3)^1/2
h0=(2+τ^4)/3・√{3/(4+τ^4)}
辺の長さを1に規格化する.辺の長さは2L.したがって,
Hk=hk/2L→H0=(2+τ^4)/2・√{3/(4+τ^4)}
H0=(2+τ^4)/2√(τ√5)
PnPn-1に垂直なn次元超平面では
a=(0,・・・,0,−an)
cn-1=−anxn+an^2=−an^2yn+an^2
hn-1=|cn-1|/‖dn-1‖,‖dn-1‖=(an^2)^1/2
an^2yn=0
→h2=a3=τ^2/√3,H2=h2/2L=τ^2√3/2
また,
→V2=1/2・tan54°×5/2={(5+2√5)/5}^1/2・5/4(正五角形の面積)
→Λ2=3√3/2(正六角形の面積)
V=(N0・V2・H0+N2・Λ2・H2)/3
={12・5{(5+2√5)/5}^1/2/4・(2+τ^4)/2√(τ√5)+20・3√3/2・τ^2√3/2}/3
=5/2・τ/√5・(2+τ^4)+15τ^2
===================================
[1]中心から正五角形面までの距離
H0=(2+τ^4)/2√(τ√5)=2.32744
[2]中心から正六角形面までの距離
H2=τ^2√3/2=2.26728
数値自体を計算するのは難しいかもしれないが,結果は自明である.なぜならば,
[1]切頂20面体は球に内接する(外接球をもつ)→中心から頂点までの距離は等しい.
[2]面の外接円が大きいほど中心までの距離は小さくなる.
[3]中心から正六角形面までの距離の方が小さい.
===================================