■学会レポート(形の科学会)

 今年はイメージミッション社よりペンタドロンが発売され、その販売促進を兼ねて形の科学会に参加.ペンタドロンはまだ参加者には浸透していないらしく知名度は低いのであるが,地道に売り上げていくしかない.一方,中川宏さんの木工多面体は完売(三浦公亮先生もお買いあげ下さった).学会運営にあたられた先生方の感謝申し上げたい.

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 ひさびさの参加であったが,一番驚いたのはジュニア会員(小中学生)の研究発表であった.

[1]単位体積のけい藻土中の放散虫の化石数を計測し,たとえば,ジュラ紀とxxx紀の間で数が漸増漸減しているとか激増激減しているとか,それを指標としてその間の海洋環境の変化を推定しようというもの.

[2]アンモナイトの化石には完全な形のものは少なく,その破片から全体像を復元しようとする試み.

 [2]について補足すると,アンモナイトには骨様構造があり,肋骨の先端が2つに分岐するものとしないものに分類される.巻き貝を円錐に伸ばしたとき,先端部分と根元部分で肋の分岐構造がまったく異なっているという.

 肋の先端が分岐するしないはチューリングパターンによって決定されるのであろうが,実は人間の肋骨の先端部分(正確には肋軟骨)にも分岐するもの,しないものがある.加齢により肋軟骨は骨化するのであるが,男性では肋軟骨表面が骨化しやすく,胸部レ線では分岐しているように見える.それに対して女性は中心が骨化するため胸部レ線では槍状になり分岐しない.最近の研修医は知らないであろうが,私の頃は男にvaginaあり,女にpenisありと呼ばれていて,胸部レ線の肋骨像から性別判定できるという経験的知識となっている.

 シニアの発表,たとえば,

[3]杉本晃久先生の5角形タイルの発表に対して,小学生のジュニア会員から,そのようなタイリングは自然界に存在しますかというが質問がなげかけられた.鋭い質問(大人からはでない質問)に杉本先生が絶句するというシーンがあったが,失笑というか,何かほのぼのとされられるシーンであった.

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 私に関していえば

[4]ペンタドロンの発表で,15例ある平行多面体同士の変身立体の1例をデモしたところ,高木隆司先生よりMOMA(NY)に吉本キューブの名前で,似たようなものが展示されていること.

[5]高次元準正多面体の漸化式を用いたk面数計算は,3本ハノイの塔をk本ハノイの塔に拡張するときのアルゴリズムにそっくりであるという松浦先生(東京電機大)の示唆は大変ありがたいものであった.

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