円:x^2+y^2=r^2の対称性を考えるとき,中心のまわりの回転は
[x’]=[cosθ,−sinθ][x]
[y’] [sinθ, cosθ][y]
直径に関する折り返しは
[x’]=[cosθ, sinθ][x]
[y’] [sinθ,−cosθ][y]
という線形変換であり,x’^2+y’^2=x^2+y^2=r^2を満たします.
今回のコラムでは,(その3)で宿題とした楕円上に中心をおく運動について解析してみます.
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【Q1】楕円上に中心をおく単振動する点の軌跡
x=2cosθ
y= sinθ+csin3θ
の代数曲線としての次数?
[A1]この曲線はx軸,y軸に関して対称ですから,x^2,y^2の多項式になります(D2).
D2:x^2=4cos^2θ
D2:y^2=(−4csin^3θ+3csinθ+sinθ)^2
=(1−cos^2θ)(−4c(1−cos^2θ)+3c+1)^2
=(1−x^2/4)(−4c(1−x^2/4)+3c+1)^2
よって,6次式
4y^2=(4−x^2)(cx^2−c+1)^2
c=0 → x^2/4+y^2=1(楕円に退化)
c=1/3 → 36y^2=(4−x^2)(x^2+18)^2
c=2/3 → 36y^2=(4−x^2)(2x^2+9)^2
c=1 → 4y^2=x^4(4−x^2)
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これでOKなのですが,(その4)より,与式は
F(x^2+y^2,x^2)=0
と表わせることがすでにわかっています.
D0:x^2+y^2=−16c^2cos^6θ+8c(3c−1)cos^4θ−(8c^2−11c−1)cos^2θ+(c−1)^2
D2:x^2=4cos^2θ
D0:x^2+y^2はcosθに関する6次式,D2:x^2は2次式ですから,
f(x,y)=c^2(x^2)^3+d(x^2)^2+e(x^2)+f(x^2+y^2)+g=0
の形に表すことを考えてみます.すると,未定係数はcの関数として
d=−6c^2+2c
e=9c^2+10c−3
f=4
g=−4(c−1)^2
と表されます.
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【Q2】楕円上に中心をおく円周上を回転する点の軌跡
x=2cosθ+ccos3θ
y= sinθ+csin3θ
の代数曲線としての次数?
[A2]係数を一部変更して,真円上に中心をおく円周上を回転する点の軌跡
x=cosθ+ccos3θ
y=sinθ+csin3θ
について調べてみましょう.この曲線はx軸,y軸に関して対称ですから,D2:F(x^2+y^2,x^2)で表されます.
D0:x^2+y^2=1+c^2+2ccos2θ=1+c^2−2c−4ccos^2θ → cos^2θ=(x^2+y^2−(1−c)^2)/4c
D2:x^2=(4ccos^3θ−3ccosθ+cosθ)^2
=cos^2θ(4ccos^2θ−3c+1)^2
=(x^2+y^2−(1−c)^2)/4c・(x^2+y^2−(1−c)^2−3c+1)^2
→ 6次式:(x^2+y^2−(1−c)^2)(x^2+y^2−(1−c)^2−3c+1)^2=4cx^2
このことから,当該の代数曲線も6次式
f(x,y)=(x^2+y^2)^3+d(x^2+y^2)^2+e(x^2+y^2)+fx^2+g=0
で表せるものと仮定してみます.(本当に正しいでしょうか?)
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D2:x^2=(4ccos^3θ−3ccosθ+2cosθ)^2
=cos^2θ(4ccos^2θ−3c+2)^2
D2:y^2=(−4csin^3θ+3csinθ+sinθ)^2
=(1−cos^2θ)(−4c(1−cos^2θ)+3c+1)^2
=(1−cos^2θ)(4ccos^2θ−c+1)^2
D0:x^2+y^2=8ccos^4θ−(2c−3)cos^2θ+(c−1)^2
D0はcosθに関する4次式,D2は6次式となりますから,
f(x,y)=(x^2+y^2)^3+d(x^2+y^2)^2+e(x^2+y^2)+fx^2+g=0
ではcos^12θが消去されません.そこで,代数曲線を6次式
f(x,y)=(x^2+y^2)^3+d(x^2+y^2)^2+e(x^2+y^2)+fx^4+gx^2+h=0
と仮定して,未定係数法によりd,e,f,g,hを求めてみます.(モデル式が正しいことを確信しているわけではありません.)
cosθ=1 → x^2=(c+2)^2,y^2=0,x^2+y^2=(c+2)^2
cosθ=√3/2 → x^2=3,y^2=(2c+1)^2/4,x^2+y^2=c^2+c+13/9
cosθ=1/√2 → x^2=(c−2)^2/2,y^2=(c+1)^2/2,x^2+y^2=c^2−c+5/2
cosθ=1/2 → x^2=(c−1)^2,y^2=3/4,x^2+y^2=c^2−2c+7/4
cosθ=0 → x^2=0,y^2=(c−1)^2,x^2+y^2=(c−1)^2
これらのデータセットをもとに未定係数法の計算を畏友・阪本ひろむ氏にお願いしましたが,係数は求められませんでした.
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ここまでくれば,交差項(x^2+y^2)^m(x^2)^nが現れる可能性が考えられるところです.
D0:x^2+y^2=8c(cos^2θ−P)^2+Q・・・(1)
P=(2c−3)/16c
Q=(c−1)^2−8cP^2
D2:x^2=(cos^2θ−P+P){4c(cos^2θ−P)+4cP−3c+2}^2=16c^2(cos^2θ−P)^3+8c(6cP−3c+2)(cos^2θ−P)^2+(8cP+1)(4cP−3c+2)(cos^2θ−P)+P(4cP−3c+2)^2・・・(2)
x^2−8c(6cP−3c+2)(cos^2θ−P)^2−P(4cP−3c+2)^2=(cos^2θ−P){16c^2(cos^2θ−P)^2+(8cP+1)(4cP−3c+2)}
両辺を2乗して
(x^2−8c(6cP−3c+2)(cos^2θ−P)^2−P(4cP−3c+2)^2)^2=(cos^2θ−P)^2{16c^2(cos^2θ−P)^2+(8cP+1)(4cP−3c+2)}^2
(1)より
(cos^2θ−P)^2=(x^2+y^2−Q)/3c
を代入すると,この式は交差項のある6次式
{x^2−8c(6cP−3c+2)(x^2+y^2−Q)/3c−P(4cP−3c+2)^2}^2=(x^2+y^2−Q)/3c{16c^2(x^2+y^2−Q)/3c+(8cP+1)(4cP−3c+2)}^2
であることがわかりました.
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【Q3】特異点をもたずに正三角形に内接しながら回転することができる円以外の図形としては,たとえば,
x=3sinθ+cos^3θ
y=−3cosθ−sin^3θ
が知られている.この曲線の代数曲線としての次数?
[A3]cos^3θ,sin^3θはcos3θ,sin3θで表されますから,これまでの結果より6次曲線となることが予測されます.
この曲線は直線y=±xに関する裏返しに関して対称ですから,
f(x+y,(x−y)^2)
f(x−y,(x+y)^2)
の多項式の形に表すことができます.また,(x+y)^2=x^2+y^2+2xy,(x−y)^2=x^2+y^2−2xyとなって,x^2+y^2,xyの多項式の形
f(x,y)=F(x^2+y^2,xy)
に表すこともできます.すなわち,
D2:F(x^2+y^2,x^2)
のx^2(あるいはy^2)の代わりがxyということになります.
D0:x^2+y^2=−3(sinθcosθ)^2+6sinθcosθ+10・・・(1)
D2:−xy=(sinθcosθ)^3−6(sinθcosθ)^2+9sinθcosθ+3・・・(2)
(1)→(sinθcosθ−1)^2=−(x^2+y^2−13)/3
(2)→−xy−3=sinθcosθ(sinθcosθ−3)^2=(sinθcosθ−1)^3−3(sinθcosθ−1)^2+4
D0はsinθcosθ=sin2θ/2の2次式,D2は3次式です.
(2)より
−xy−7=(sinθcosθ−1)^2(sinθcosθ−1−3)
ですから,(1)を代入すると
(x^2+y^2−13)^3+27(x^2+y^2+xy−6)^2=0
となって,実際に6次式で表すことができました.
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【4】まとめ
エピサイクロイド,ハイポサイロイドの場合とは異なり,[Q2]では交差項(x^2+y^2)^m(x^2)^n,[Q3]では交差項(x^2+y^2)^m(xy)^nが出現しています.
cosmθ,sinmθ項が含まれるエピサイクロイド,ハイポサイロイドではD0がcosθのm次式,Dnが2m次式で,代数曲線は交差項の現れない2m次式として表されました.
それに対して,交差項が現れた式はD0がcosθのm次式として,Dnはmの非整数倍n次式となっていました.このとき,代数曲線としての次数はLCM(m,n)に関係していることがわかりますが,これまで検討した例では(x,y)に含まれるcoskθ,sinkθ項の最大の係数kをK=max{k}とすると,次数は2K次式となっています.
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