■置換多面体の空間充填性(その170)
正2n胞体の二面角はつねに90°であるが,正n+1胞体の二面角は
cosδ1=1/n,sinδ1=√(n^2−1)/n
正2^n胞体の二面角は
cosδ2=−(n−2)/n,sinδ2=(2√(n−1))/n
であり,二面角はnとともに増加しそれぞ90°,180°に近づく.
今回のコラムでは2δ1+2δ2=360°となるのは3次元の場合に限られること,2δ2=360°となるのは4次元の場合に限られることを証明しておこう.
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【1】3次元の特殊性
cos(δ1+δ2)=cosδ1cosδ2−sinδ1sinδ2=−(n−2)/n^2−2(n−1)√(n+1)/n^2=−1
n^2−n+2=2(n−1)√(n+1)
n^2(n−3)^2=0
すなわち,3次元において2δ1+2δ2=360°となるが,2種の二胞角で,その和が360°になり,空間充填形を構成できるのは,3次元の場合だけである.
arccos(1/3)+arccos(−1/3)=
=arccos(1/3)+π−arccos(1/3)=π
となって,解析的にも確かめられた.
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【2】4次元の特殊性
cosδ2=−(n−2)/n=−1/2
よりn=4.すなわち,4次元正16細胞体の二胞角はちょうど120°となる.
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【3】まとめ
超立方体は各次元で空間充填形であるが,以上のことから,複数の種類による空間充填形として2種の胞間の角の和が360°になるのは,n≧3のとき,
[1]2α3+2β3=360°
[2]3β4=360°
[3]α8+2β8=360°
の場合だけである.これは空間充填の必要条件だが十分条件も満たす,すなわち,実際の空間充填形を構成することができる.
正多面体で空間充填形になるのは,各次元で可能な超立方体を除けば,3,4,8次元のものに尽きるのである.なお,24次元にはリーチ格子という密な格子があるが,その構成要素は正多面体ではない(亜正多面体とでもいうべきか?).
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