■はなまるの幾何学(その20)

 常識的には,内側であろうが外側であろうがm回転すると考えるのがアタリマエであるから,このように説明されても何となくだまされているような気分になるのが「自転・公転問題」である.

 n尖点ハイポサイクロイドは

  x=(n−1)cosθ+cos(n−1)θ

  y=(n−1)sinθ−sin(n−1)θ

一方,n尖点エピサイクロイドは

  x=(n+1)cosθ−cos(n+1)θ

  y=(n+1)sinθ−sin(n+1)θ

と表されるのもそのせいである.

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【1】n角形の穴をあけるドリルの場合

 n角の穴をあけるドリルの場合,内側の円(半径r)を固定させて,外側の円(半径2r)をそのまわりを回転させる.このとき,ステーター(内側の円)はローター(外側の円)の中心の軌跡に一致する.そしてローターの内歯数をr,ステーターの外歯数をsとすると,1ピッチでそれぞれ360°/r,360°/s回転することになる.

 自転・公転問題に焼き直してみると,大円の円周は小円のr/s(=m)倍と考えることができる.そして,

  α:小円の中心の大円の中心に対する公転角

  β:小円の自転角

として,弧の長さを等しいとおけば

  mα=α+β → m−1=β/α

m−1の−1が生じた理由は,これでわかっていただけるものと思う.

 ローターの(n−1)公転で1回転(自転)するから,

  β/α=1/(n−1)

  m−1=r/s−1=(r−s)/s=1/(n−1)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 一見これで正しいように思えるのだが,自転・公転問題とは大円,小円の「定」「動」の関係が逆になっている.ドリルの問題で回転するのは小円ではなく大円のほうであるから,

  大円の中心の小円の中心に対する公転角=α

  大円の自転角=小円の自転角×s/r=β×s/r

  m−1=β/α×s/r=1/(n−1)

  (r−s)/r=1/(n−1)

が求める式である.

 実にややこしいため(その11)では何の説明もなしに式

  (r−s)/r=1/(n−1) → (n−2)r=(n−1)s

を掲げたが,大円の公転周期はsピッチ,大円の自転角は1ピッチごとに(1/s−1/r)回転差分だけ生ずるから,大円が1公転したとき(sピッチ)の大円の自転角は

  s(1/s−1/r)=(r−s)/r=1/(n−1)

になると考えることもできるだろう.

 ともあれ,n=4,r=24であればs=16ということになる.歯数の差を調節することによって,n角の穴があけられるのである.

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