■書ききれなかった微分積分の話(その53)
(その51)では微分法を使わないで,最大値・最小値問題を解いたが,かえって簡単になった.手法の選択は時と場合に応じて適切に活用すべきであるという例である.
なお,コーシー・シュワルツの不等式によらない場合は,
2(a^2+b^2)−(a+b)^2=(a−b)^2≧0
3(a^2+b^2+c^2)−(a+b+c)^2=(a−b)^2+(b−c)^2+(c−a)^2≧0
4(a^2+b^2+c^2+d^2)−(a+b+c+d)^2=(a−b)^2+(b−c)^2+(c−d)^2+(d−a)^2≧0
より,
NΣdi^2−(Σdi)^2≧0 (等号はd1=d2=・・・=dNのとき)
を導き出すことができる.
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[3]相加相乗平均不等式
(その52)のチェビシェフの不等式においてb=1/aと置く代わりに,ここでは相加相乗平均不等式を用いて
(Σa)・(Σ1/a)≧n^2
を証明する.
n=2のとき,
(a+b)(1/a+1/b)=1+a/b+b/a+1
a/b+b/a≧2より
(a+b)(1/a+1/b)≧4
(Σa)・(Σ1/a)≧n^2
ではn^2個の項が得られるが,n個の1と(n^2−n)/2個の項の対(各対は2以上)の分解されるから,全体の和は
≧n+(n^2−n)=n^2
になる.
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