エピサイクロイド
x=(n+1)cosθ−cos(n+1)θ
y=(n+1)sinθ−sin(n+1)θ
ハイポサイクロド
x=(n−1)cosθ+cos(n−1)θ
y=(n−1)sinθ−sin(n−1)θ
において
cosθ=(1−t^2)/(1+t^2)
sinθ=2t/(1+t^2)
と表せばいずれも有理曲線であることは直ちにわかりますが,いま問題としていることはエピサイクロイド,ハイポサイクロドの代数曲線としての次数です.
ド・モアブルの定理
(cosθ+isinθ)^n=cosnθ+isinnθ
の左辺を2項展開して,両辺の実部,虚部を比較することによって
cosnθ=cos^nθ−nC2cos^(n-2)θsin^2θ+・・・
sinnθ=nC1cos^(n-1)θsinθ−nC3cos^(n-3)θsin^3θ+・・・
が得られますから,ハイポサイクロイドはcosθに関するn−1次式,エピサイクロイドはn+1次式となります.
(その1)では,
エピサイクロイド ハイポサイクロド
n=1 4次曲線
n=2 6次曲線 1次(2次?)
n=3 (8次曲線?) 4次曲線
n=4 (10次曲線?) 6次曲線
となることを示しました.
ハイポサイクロイドのn=2の場合は1次直線ですが,半径が無限大となって全体が一面に拡がってしまった円弧(2次曲線)と解釈することができますから,
エピサイクロイド ハイポサイクロド
n 2(n+1)次 2(n−1)次
となることが予測されます.
しかし,cosθに関するn−1次方程式(n+1次方程式)を解く方法は,ここまではうまくいったのですが,nが大きくなると難しくなります.そのため,ハイポサイクロイド(エピサイクロイド)の一般的な代数曲線表示には別の方法を用いる必要がでてくると思われます.
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【1】一般的な代数曲線表示
ハイポサイクロイド
x=(n−1)cosθ+cos(n−1)θ・・・(1)
y=(n−1)sinθ−sin(n−1)θ・・・(2)
において,(1)^2+(2)^2より
cosnθ={x^2+y^2−(n−1)^2−1}/2(n−1)
これでcosnθ,sin^2nθが求まったことになりますが,(1),(2)を以下のように書き換えます.
x=(n−1)cosθ+cosnθcosθ+sinnθsinθ・・・(3)
y=(n−1)sinθ−sinnθcosθ+cosnθsinθ・・・(4)
(3)より
x−(n−1+cosnθ)cosθ=sinnθsinθ
両辺を2乗して整理するとcosθに関する2次方程式
{(n−1+cosnθ)^2+1−cos^2nθ}cos^2θ−2(n−1+cosnθ)xcosθ+x^2−1+cos^2nθ=0
が得られます.したがって,cosθを求めるには,nの値に関係なく2次方程式を解けばよいことになります.
cosθ=α+β^1/2
α=(n−1+cosnθ)x/{(n−1+cosnθ)^2+1−cos^2nθ}
ここで,
(n−1+cosnθ)^2+1−cos^2nθ=x^2+y^2
ですから,
α=(n−1+cosnθ)x/(x^2+y^2)
β={(n−1+cosnθ)^2x^2−{(n−1+cosnθ)^2+1−cos^2nθ}(x^2−1+cos^2nθ)}/(x^2+y^2)^2
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
これを解いてcosnθ,sin^2nθ,cosθ,sin^2θを(4)に代入すれば代数曲線表示が完成しそうな気がしますが,cosθに現れる根号がじゃまになって簡単にはいきません.そこで,(1)のcosθの次数をn−1次式から1次式まで下げることにします.
黄金比φを公比とする等比数列
1,φ,φ^2 ,φ^3,φ^4 ,φ^5 ,・・・
を考えると、1+φ=φ^2ですから
φ^2=φ+1
φ^3=φ^2φ=φ^2+φ=2φ+1
φ^4=φ^3φ=2φ^2+φ=3φ+2
φ^5=φ^4φ=3φ^2+2φ=5φ+3
とするのと同じ要領で次数を低下させます.なお,黄金比φには多く性質があり、ここで、ガウス記号[x](xを超えない最大の整数)を用いると、数列{[φ^n-1]}の各次数に対応して得られる整数列は
1,1,2,3,5,8,13,・・・
すなわち、フィボナッチ数列{Fn}となります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
A=2(n−1+cosnθ)x/(x^2+y^2)
B=−(x^2−1+cos^2nθ)/(x^2+y^2)
とおくと
cos^2θ=Acosθ+B
cos^3θ=cos^2θcosθ=Acos^2θ+Bcosθ
=(A^2+B)cosθ+AB
cos^4θ=cos^3θcosθ=(A^2+B)cos^2θ+ABcosθ
=((A^2+B)A+AB)cosθ+(A^2+B)B
cos^5θ=cos^4θcosθ=((A^2+B)A+AB)cos^2θ+(A^2+B)Bcosθ
=(((A^2+B)A+AB)A+(A^2+B)B)+cosθ+((A^2+B)A+AB)B
また,
cosnθ=(cosθのチェビシェフ多項式)=Tn,
sinnθ=sinθ×(cosθの多項式)=sinθ×Gn
と表すことにすると
x=(n−1)T1+Tn-1=Ccosθ+D=C(α+β^1/2)+D
(x−Cα−D)^2=C^2β
となって,代数曲線表示が完成します.
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
一方,エピサイクロイド
x=(n+1)cosθ−cos(n+1)θ・・・(1)
y=(n+1)sinθ−sin(n+1)θ・・・(2)
の場合は,(1)^2+(2)^2より
cosnθ={x^2+y^2−(n+1)^2−1}/2(n+1)
x=(n+1)cosθ−cosnθcosθ+sinnθsinθ・・・(3)
y=(n+1)sinθ−sinnθcosθ−cosnθsinθ・・・(4)
x−(n+1−cosnθ)cosθ=sinnθsinθ
{(n+1−cosnθ)^2+1−cos^2nθ}cos^2θ−2(n+1−cosnθ)xcosθ+x^2−1+cos^2nθ=0
α=(n+1−cosnθ)x/(x^2+y^2)
β={(n+1−cosnθ)^2x^2−{(n+1−cosnθ)^2+1−cos^2nθ}(x^2−1+cos^2nθ)}/(x^2+y^2)^2
A=2(n+1−cosnθ)x/(x^2+y^2)
B=−(x^2−1+cos^2nθ)/(x^2+y^2)
となるだけで,あとの計算手順は同じです.
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【2】計算例
たとえば,エピサイクロイド(n=3)が8次曲線になるかどうか調べてみることにしましょう.
x=4cosθ−cos4θ
=8cos^4θ−8cos^2θ+4cosθ+1
Tnの最高次の項の係数は2^n-1ですから,この場合は8となります.
x=8((A^2+B)A+AB)cosθ+8(A^2+B)B
−8Acosθ−8B+4cosθ+1
C=8((A^2+B)A+AB)−8A+4
D=8(A^2+B)B−8B+1
(x−Cα−D)^2=C^2β
これ以降の計算は次回報告することにして,今回はそのアルゴリズムを示すにとどめます.もっと簡単なアルゴリズムがあるに違いないと思われるからです.
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