n角の穴をあけるドリルとロータリーエンジンは回転円と固定円が表裏一体の関係にある.n角の穴をあけるドリルに引き続いて,nサイクルのロータリーエンジンを設計することは自然な成り行きであろう.
(その17)では,ペリトロコイド曲線を(n−2)公転について1回自転させることによって,たとえば,n=4の場合はルーローの三角形に類似した包絡線が得られることを示した.
非円形となるべきところを円形歯車を用いて運動を近似しているので,ルーローの三角形も変形を余儀なくされるというわけであるが,今回のコラムでは包絡線の方程式を求めてみて,ローター曲線とルーローの三角形にどれくらいの差異があるのか調べることにした.
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【1】包絡線の求め方
陰関数f(x,y)=0上の点(x,y)で接線の方程式を求めるには,2変数関数の微分の知識が必要です.その場合,f(x,y)=0のyをxの関数(f(x,y(x))=0)とみなして,両辺をxで偏微分すれば2変数関数の合成微分の公式によって
∂f/∂xdx/dx+∂f/∂ydy/dx=0
すなわち,fx+fydy/dx=0より,
y’=dy/dx=−fx/fy
が得られます.fx+fyy’=0の式をxの関数とみて,さらに,この両辺をxで微分すれば
fxx+fxyy’+(fyx+fyyy’)y’+fyy”=0
より
y”=d^2y/dx^2
=−1/fy(fxx−2fxyfx/fy+fyyfx^2/fy^2)
が得られます.決して,y”=−fxx/fyyなどというでたらめを書かないように!
曲線族の各々の曲線すべてに接する曲線が包絡線です.曲線族が陰関数f(x,y,t)=0で与えられている場合,パラメータtが動くときの包絡線の方程式を求めるにはft=0を解いてt=g(x,y)を消去したり,あるいはx,yをtで表します.
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パラメータ表示された曲線:x=x(β,θ),y=y(β,θ)が与えられている場合,パラメータβが微小変化するとき,包絡線に接しているある点における接線の傾きは
dy/dx=(∂y/∂β)/(∂x/∂β)
で,この傾きの曲線に沿ってx方向に∂x/∂β,y方向に∂y/∂β変化します.
パラメータθが動くときも同様で,
dy/dx=(∂y/∂θ)/(∂x/∂θ)
したがって,
(∂y/∂β)/(∂x/∂β)=(∂y/∂θ)/(∂x/∂θ)
(∂y/∂β)(∂x/∂θ)−(∂y/∂β)(∂x/∂θ)=0
が成り立てば接線に沿って動いていくことになります.この点の軌跡が求める包絡線にほかなりません.
ペリトロコイド曲線の運動族
x=Rcos(β+γ−θ)+acos((n−1)β−θ)+acos((n−2)θ)
y=Rsin(β+γ−θ)+asin((n−1)β−θ)+asin((n−2)θ)
に対して
(∂y/∂β)(∂x/∂θ)−(∂y/∂β)(∂x/∂θ)=0
を計算すると
θ=β−2/(n−1)arctan(Rsin((n−2)β−γ)/(Rcos((n−2)β−γ)+(n−1)a))
となって,包絡線は1パラメータ曲線:x=x(β),y=y(β)となります.
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【2】ローター曲線
ロータリーエンジンはペリトロコイド曲線と包絡線を基本形状として設計されますが,ローターとなるのは内包絡線だけですから,外包絡線部分を除いてやる必要があります.そのための条件として
Rcos((n−2)β−γ)+(n−1)a=0
を用います.
以下,n=3〜6のときのロータリーエンジンとローターの形を掲げます.たとえば,n=4のローターをみると,ルーローの三角形よりも丸みが少ないようにみえます.一般のパラメータtを用いると,曲率は
κ(t)=(x’y”−x”y’)/(x’^2+y’^2)^(3/2)
曲率半径は1/κ(t)で与えられます.ルーローの三角形の弧は円弧ですから曲率半径は一定です.この円弧と比較してみると,ローターの弧の中央部はルーローの三角形の弧よりも曲率が小さいことが計算されます.
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[1]3サイクルのロータリーエンジン
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[2]4サイクルのロータリーエンジン
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[3]5サイクルのロータリーエンジン
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[4]6サイクルのロータリーエンジン
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