■円被覆の問題(その1)
【1】ガウスの円問題
原点を中心とした半径rの円の内部(境界を含む)にある整数点の個数をR(r)で表す.
R(10)=317 R(100)=31417
R(20)=1257 R(200)=125627
R(30)=2821 R(300)=282697
R(r)は円の面積の推定値を与える.
r R(r)/r^2 r R(r)/r^2
10 3.17 100 3.1417
20 3.1425 200 3.140725
30 3.134 300 3.14107
ガウスは
|R(r)−πr^2|<cr
を示したが,
|R(r)−πr^2|<cr^k
となるkの最小値を求める問題に一般化される.
シェルピンスキーはk≦2/3を証明し,ガウスのk=1を大きく改善した.
|R(r)−πr^2|<cr^2/3
ヴィノグラードフはk≦34/53,1963年に陳景潤はk≦24/37を,1990年にハクスリーはk≦46/73を得たが,シェルピンスキーの成果からほんのわずかしか進んでいない.最近,ハクスリーは46/73を131/208に改良している.
下の値は1915年,ハーディとランダウが与えたk=1/2と予想されている.
R(r)=πr^2+O(r^1/2)
同じ問題を3次元球についても考えることができる.→コラム「平面上の格子点」参照.標準単体,超立方体,正軸体などについての格子点問題は,コラム「スターリングの公式の図形的証明?」(その7−9)参照.
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【2】円被覆定理
ここでは半径1の円の円周をその円周上に中心をもつ半径rの円板で覆うのに必要な円板の個数νを求めてみることにします.
半径rの円を考えると,2円の中心間距離が2rより小さいとき2つの円は互いに重なり合うことになります(2rで接し,2rより大きいと離れる).しかし,この問題では単純に重なり合うだけではないのでもう少し複雑な計算が必要になります.円板の中心が円周のn等分点にあるとして,隣の円との交点が単位円周上の連接する2n等分点になければなりません.
半径rの円板の中心を結ぶ弦に対する単位円の中心角をθとすると,円周角はθ/2,したがって,劣弧に対する円周角はπ−θ/2となって,
cos(θ/2)+rcos(π/2−θ/4)=1
1−2{sin(θ/4)}^2+rsin(θ/4)=1
sin(θ/4)=r/2
θ=4arcsin(r/2)=2arccos((2−r^2)/2)
単位円周を被覆するのに必要な円板の個数νは2πをθで割った答えを切り上げて得られますから,[・]をガウス記号として−[−2π/θ]より
r≧2のとき,ν=1
√2≦r<2のとき,ν=2
r<√2のとき,ν=−[−π/2arcsin(r/2)]
で与えられることがわかります.以下,数値計算で求めると
1.00≦rのとき,ν=3 0.45≦rのとき,ν=7
0.77≦rのとき,ν=4 0.40≦rのとき,ν=8
0.62≦rのとき,ν=5 0.35≦rのとき,ν=9
0.52≦rのとき,ν=6 0.32≦rのとき,ν=10
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ところで,1つの10円玉を机の上において,それと触れ合うようにかつお互いに重ならないようにして,6個の10円玉を置くことができます.次に円が重なることは許す代わりに,円の中心が他の円の外にあるという条件をつけてr=1の円被覆問題を考えることができます.
[参]吉川敦「無限を垣間みる」牧野書店
には多くの円被覆問題が掲載されていますが,ここでは結果だけを紹介することにします.
(1)原点から1.43の距離にある半径1の円板8個は単位円周を被覆することができる.9個にすると中心点が他の円の内部にきてしまう.
(2)中心が他の円の内部に来ないようにして,単位円周を被覆する単位円板を18個まで配置することができる.
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