■高校生が発見した幾何の定理(その5)

 接する円の族に関する定理では何百という美しい定理があるが,シュタイナー円鎖について述べておきたい.シュタイナーの定理とは「小円を大円の内部におき,この2つの円の中間に次々に接する円列を作る.たいていの場合,最後の円は重なってしまい,この円列は互いに接する円環をなさない.しかしときとして完全な円環をなす場合がある.このとき,最初の円をどこに選ぼうとも完全な円環をなす.」というものである.

 シュタイナーの定理では,円鎖がうまく閉じるはどうかに関わらず,円鎖を構成する円の中心はすべてひとつの楕円上にある.シュタイナーの定理でn→∞とすると,アルキメデスのアルベロスになる.アルキメデスのアルベロス(靴屋のナイフ)円列はシュタイナーの円鎖の特別な場合になっていて,円の中心はすべて基線上に長径をもつ楕円の上にのっている.この円列の円の中心から基線までの距離は半径の2倍,4倍,8倍,・・・となる(パップス).

 シュタイナーの定理とポンスレーの定理に共通する特徴は,2つの円が同心円ならば自明であるということである.ポンスレーの定理が成り立つような2円を見つけることは容易ではないが,シュタイナーの定理は最初の2円が同心円になるような反転を考えると容易に証明できる.反転によって,接する2円は接する2円か,円とその接線か,平行な2直線のいずれかにに移る.また,平面上の交わらない2つの円を同心円に移す写像が存在する.シュタイナーの定理はこれらの事実に基づいて証明されるのである.

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 シュタイナーの定理が使いにくいのは,はじめの2つの円の中心間距離の条件(オイラー・フース型定理)が与えられていないためである.ここでは

  大円(半径R),小円(半径r),中心間距離d

として,シュタイナーの定理に対応するオイラー・フース型定理を紹介する.

  大円(半径R),小円(半径r),中心間距離d

  s=(1−sin(π/n))/(1+sin(π/n))

とおくと,

  d^2=r^2−rR(s+1/s)+R^2

これがシュタイナーの定理に対応するオイラー・フース型定理である.

 もし,d=0ならば

  (r−sR)(r−R/s)=0

となるが,r=R/sは大円と小円が逆転するのでr=sR.また,s<1/sより,rはd=0のとき最大値sRをとる.

 なお,

  s+1/s−2=(√s−1/√s)^2

より,不等式

  s+1/s−2≧s−2    (s≧2)

  s+1/s−2≧0      (1/2≦s≦2)

  s+1/s−2≧1/s−2  (0<s≦1/2)

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