■5次方程式・再訪(その4)

 2次方程式から3次方程式までは約3千年の時間を要したのですが,それに比べて,4次方程式の解法は非常に短時間でなされたことになる.

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【1】4次方程式の解法(オイラーの方法)

 引き続いて,4次方程式:

  ax^4+bx^3+cx^2+dx+e=0

では,x=u−b/4aとおけば,

  u^4+pu^2+qu+r=0

  p=(8ac−3b^2)/8a^2

  q=(b^3−4abc+8a^2d)/8a^3

  r=(−3b^4+16ab^2c−64a^2bc+256a^3e)/256a^4

というように3次の項を欠いたuに関する4次方程式が得られます.カルダノ変換によって,まず3次の項を消すのです.

 また,因数分解の公式

  a^3+b^3+c^3−3abc

 =(a+b+c)(a^2+b^2+c^2−ab−bc−ca)

 =(a+b+c)(a+bω+cω^2)(a+bω^2+cω)

は,巡回行列式

    |a b c|

  Δ=|c a b|=a^3+b^3+c^3−3abc

    |b c a|

より得られるのですが,それと同様に,

    |a b c d|

  Δ=|d a b c|

    |c d a b|

    |b c d a|

   =a^4+b^4+c^4+d^4−2(a^2b^2+a^2c^2+a^2d^2+b^2c^2+b^2d^2+c^2d^2)+8abcd

   =(a+b+c+d)(a+b−c−d)(a−b+c−d)(a−b−c+d)

と因数分解できることを利用することにしましょう.

  u^4−2(x^2+y^2+z^2)u^2+8xyzu+x^4+y^4+z^4−2(x^2y^2+x^2z^2+y^2z^2)

 =(u+x+y+z)(u−x−y+z)(u−x+y−z)(u+x−y−z)

すなわち,uの4次式でu^3の項を欠いており,因数分解できる恒等式となっています.読者のなかにはこの式に対称の美を感じる人もいるのでしょうが,それにしてもずいぶん荘厳な(いかめしい)式です.

 ともあれ,

  p=−2(x^2+y^2+z^2),

  q=8xyz,

  r=x^4+y^4+z^4−2(x^2y^2+x^2z^2+y^2z^2)

なるx,y,zが見いだされれば,解は

  u=−x−y−z

  u=x+y−z

  u=x−y+z

  u=−x+y+z

となることがわかります.

 ここで,X=x^2,Y=y^2,Z=z^2とおけば,

  X+Y+Z=−p/2

  XYZ=(q/8)^2

  XY+YZ+ZX={(X+Y+Z)^2−(x^4+y^4+z^4)}/2=(p^2/4−r)/4

より,X,Y,Zは

  U^3+p/2U^2+(p^2/4−r)/4U−q^2/64=0

の解ということになりますから,3次方程式の根の公式に帰着され,係数で具体的に表せることが理解されます.

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【2】4次方程式の解法(フェラーリの方法)

 以上が3次方程式の解法に類似したオイラーの方法ですが,4次方程式の解法を初めて発見したのはフェラーリですからから,その解法も述べておかなければなりません.

 3次の項を欠いた4次方程式

  u^4+pu^2+qu+r=0

すなわち,

  u^4=−pu^2−qu−r

の両辺に2次式:2vu^2+v^2を加えて,

  u^4+2vu^2+v^2=(2v−p)u^2−qu+v^2−r

とすると,左辺は(u^2+v)^2となって完全平方になります.

 右辺の2次式は,判別式

  D=q^2−4(2v−p)(v^2−r)=0

のとき完全平方になりますから,D=0が成り立つようにvを定めると

  u^2+v=±√(2v−p){u−q/2(2v−p)}

と変形され2つの2次方程式に帰着されます.

 D=0の式を,vについて整理すると,

  8v^3−4pv^2−8rv+(4pr−q^2)=0

の解として求まることになりますから,結局,フェラーリは次数4の方程式は2次方程式と3次方程式に帰着させることができ,したがって平方根と立方根によって解けることを発見したのです.

 フェラーリの方法は平方完成によるものですが,図形的に解釈すると,4次元の超立方体の分割によるものではなく,正方形の分割を2度適用することに基づいています.

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【3】4次方程式の解法(デカルトの方法)

 それに対して,デカルトの方法とは

  u^4+pu^2+qu+r=(u^2+ku+l)(u^2−ku+m)

と2つの2次方程式に因数分解する方法です.

 両辺の係数を比較すると,

  l+m−k^2=p

  k(m−l)=q

  lm=r

より

  l=(p+k^2−q/k)/2

  m=(p+k^2+q/k)/2

 l,mを消去すると

  k^6+2pk^4+(p^2−4r)k^2−q^2=0

この方程式は6次方程式ですが,k^2=Kとおけば,Kについての3次方程式になりますから解くことができ,したがって,

  (u^2+ku+l)(u^2−ku+m)=0

の解として求まることになります.

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