■ペンタドロン・パズルの木工製作(その2)
正四面体の相対する稜は互いに直交している.8個以上の正四面体を稜同士を蝶番でつないでできる輪は,内と外が入れ替わりあうように連続的に回転することができる.正四面体でなく,細長くかつ平たい四面体では6個(鏡像体を3個ずつ交互に)をつなくだけでも回転する.
もう少しずんぐりした四面体を数個(6個とは限らない)で同様の立体を構成できる.また,適当な稜が蝶番でつながれた6つの立方体の輪も連続的に回転することができる.これらはくり返し裏返せる多面体の輪になっているというわけで,撹拌装置の原理として広く使われている.
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【1】パウル・シャッツ立体
とくに,6辺の辺長が
1,a,a,2a,2a,√5a (a=1/√3)
の四面体の鏡像体を辺長aの辺で3個ずつ交互に連結し環状に閉じたものは,3セットで辺長1の立方体に収まるという空間充填立体(1/18立方体)でもある特別な多面体の輪であり,パウル・シャッツ(Paul Schatz)により発見されたものであるという.
以下に中川宏さんにお願いして木工製作してもらったパウル・シャッツ立体とパウル・シャッツ環を掲げる.
1:a:aの直方体を2分割し,塹堵(ぜんと)型2個を作る.さらにそれを2:1に分割すると陽馬型と鼈臑(べつどう)型ができる.この鼈臑型がパウル・シャッツ立体である.
パウル・シャッツ環はパウル・シャッツ立体3対を使ったサメの顎のような動くおもちゃで,輪郭が正六角形となるとき中央には正三角形の穴があき,中央の穴が閉じたとき片面は正三角形の平面になる.
この一連の動作中,パウル・シャッツ環は常に3回対称を保って変形し,あるジョイントの角度を決めれば形が一通りに定まる1自由度の系である.
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【2】エンドレス・キューブ
適当な稜が蝶番でつながれた8つの立方体の輪も立方体(2×2×2)に折りたたむことができる.エンドレス・キューブは表の24面を裏返すと裏の24面が現れてくることを利用して観光地の写真を貼り付けてあるおみやげグッズである.最も単純なリバーシブル多面体であると思われる.
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【3】狙い
ペンタドロンは1セット12個で立方体に収まる.さらにこの折りたたみは輪になると思われ,表の12個を裏返すと裏の12個が現れてくることを利用して,リバーシブル多面体とすることができるのではないだろうか.すなわち,パウル・シャッツ立体とエンドレス・キューブに2つの特徴を併せもつのではないかということを期待しているのである.
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