■はなまるの幾何学(その7)
フーコーの振り子を何万回も振らせたときの形とはどのようなものになるか?
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【1】ガウス・ボンネの定理(球面上の平行移動)
テニスボールは表面に閉曲線が刻み込まれている.この閉曲線上の点が常に床に接触するようにテニスボールを転がすとボールは垂直軸に沿って回転する.このとき回転角はどれだけになるだろうか?
ガウス・ボンネの定理により,曲線に囲まれた全曲率がその答えである.テニスボールの場合,この曲線は対称で,全曲率4πのちょうど半分2πを囲んでいるので,回転角は2π−2π=0となる.
フーコーの振り子の運動面は北極では1日あたり360°,赤道上では0°である(回転しない).緯度をφとすると,球帽の全曲率は2π(1−sinφ)であるから,この軌跡の全曲率は
2π−2π(1−sinφ)=2πsinφ
で,これが振り子の運動面の全回転になる.パリ(φ=48°)では振り子は1時間当たり11°回転することになる.
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【2】振り子の等時性
ガリレオ・ガリレイは16世紀の終わりにピサの斜塔で有名な落体の実験を試みましたが,さらに大聖堂のシャンデリアの動きから振子の等時性を発見しています.
糸の長さlに質量mの錘のついた振り子の運動方程式は,
mldθ^2/d^2t=−mgsinθ
で表されますが,
sinθ=θ−1/3!θ^3+1/5!θ^5−・・・
より,小さな振幅に限るとsinθ≒θとしてよいので
mldθ^2/d^2t=−mgθ
となります.この方程式は線形なので解くことができ,周期
T=2π√l/g≒2√l
が得られます.したがって,周期はl=25cmで約1秒,l=1mで約2秒となり,振幅には拠りません.
これが有名な「振り子の等時性」ですが,この現象は振幅が小さい場合に限って成立します.
フーコーの振り子はパリのパンテオンのドームから吊り下げられた長さ67m,重さ28kgの振り子であったので,その周期はおとそ16秒.パリ(φ=48°)では振り子は1時間当たり11°回転しますから,この間,225回振られた形になるわけです.
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