■はなまるの幾何学(その3)

[1]交角0°,n=3

の3尖点星状領域はデルトイドよりもやせた図形です.

 ベシコビッチの論文がでた1927年以降も,単連結となる最小の星状領域はデルトイド(面積:π/8)であると信じられていました.ところが,これらより面積が小さい図形が考えだされました.

 デルトイドが3個の尖点をもっていることに着目すると,5個の尖点,7個の尖点,・・・をもつ図形を考えることができるのです.たとえば,2n+1個の尖点と円弧をもち,図形全体が内接している円に直交している星状領域(面積:Sn)を考えます.この図形の面積は,n→∞のとき,掛谷定数に収束すること

  Sn→(5−2√2)π/24(.284258)<π/11(.285599)

を示すことができます.この形はフーコーの振り子を何万回もらせたときの形になり,その面積はπ/11よりも小さくなります.

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【1】星状領域の面積

 θ=π/(2n+1)として,中心が(r,d)の半径dの円弧では

  d=r(1+cosθ)/sinθ

と計算され,そして,半径rの円の直径上に長さ1の線分がおけるものとすると,

  √(x^2+y^2)=1−r

ですから

  x=(1−r)cosθ

  y=(1−r)sinθ

 すると

  S1=1/2r^2tanθ−1/2r^2θ

  S2=1/2(r−x)(d−rtanθ)

  S3=1/2d^2arctan(r−x)/(d−y)−S1−S2

として星状領域の面積は

  Sn=πr^2−2(2n+1)S3

で求められます.

 ここで,rは2次方程式

  (4+4cosθ)r^2−(4+4cosθ)r+1=0

の大きな方の実根として求められます.

 nが大きくなるにつれてその面積はπ/11よりも小さくなります.そして,n→∞のとき

  r→(2+√2)/4(.853553)

  Sn→(5−2√2)π/24(.284258)<π/11(.285599)

を示すことができます.→コラム「デルトイドの幾何学」

 この形はフーコーの振り子を何万回もらせたときの形になりますが,尖点の個数nを増やしたとしても面積を際限なく減らすことは不可能で,その面積はπ/11より大きくはならないし,π/108以下にはできないこと,そして下限は(5−2√2)π/24以下であることがブルームとシェーンベルグにより発見されたというわけです(1963年).

  π/108≦K≦(5−2√2)π/24<π/11

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 3尖点星状領域はデルトイドよりもやせた図形で,このときすでに掛谷定数に近い値が得られています.5個の尖点をもつ図形の場合,その面積はデルトイドの面積π/8(.392699)の約3/4(.290756)になります.nを大きくすると数値計算誤差のため,計算結果が揺らいでしまいます.

 以下の図ではデルトイドも同時に示しますが,デルトイドとは異なり,これらの星状図形の接線が曲線に挟まれる部分の長さは一定であるという性質は成立しません.点Pをこの曲線上の任意の点とすると,点Pが尖点上にあるとき接線の長さは最大になります.(接線の長さが一定という決定的な性質をもつ領域は存在するのでしょうか?)

[1]3尖点星状領域

[2]5尖点星状領域

[3]7尖点星状領域

[4]9尖点星状領域

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