■置換多面体の空間充填性(その27)
これまでの数え上げは,π=2や2=√2の視覚的論証を見せられたような気分になり,どうもしっくりこない.
たとえば,8次元の(3x,x,x,x,0,0,0)の組み合わせがそうである.この点ともう一つの点との中点が(x,x,x,x,0,0,0,0)であるからもう一つの点は(−x,0,0,0,0,0,0,0)ということになる.
したがって(3x,x,x,x,0,0,0)の組み合わせが妥当なものであれば,(−x,x,x,x,0,0,0,0)の組み合わせも妥当となるわけである.
しかし,この解は直観に反している.外接球同士の球充填では,1点の周囲にこれほど多数の球が集まることは考えられないのである.なぜかというと,格子状最密球充填に関するスタインバーグの公式から,接吻数ですら以下のオーダーであるからである.
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n次元球のkissing numberの上界は立体角による評価,すなわち,正四面体配置(相互に接するよう球を配置)の問題でしたが,それに対して,下界は極大格子状配置による評価,すなわち,
A1,A2,A3,D4,D5,E6,E7,E8
の問題となります.
たとえば,n=3のみならず,n=4,5の場合も面心立方格子状配置
(±1,±1,0)
(±1,±1,0,0)
(±1,±1,0,0,0) (±1の個数は2つ)
では2n(n−1)個の球と接することができます.
n=6,7,8では面心立方格子状配置の接触点以外にも隙間ができるので,隙間の分が加わって,それぞれ
60+12=72
84+42=126
112+128=240
個の同じ大きさの球が詰め込み可能になります.(E6,E7,E8格子はそれぞれ接触数72,126,240を与える.)
この隙間は,9個の整数に対して法3で合同となるので,
x1+x2+x3=x4+x5+x6=x7+x8+x9=0 (n=6)
x1+x2+x3+x4+x5+x6=x7+x8+x9=0 (n=7)
x1+x2+x3+x4+x5+x6+x7+x8+x9=0 (n=8)
であって,
12×3=42,42×3=128
という関係にあり,E8では9個の球によって完全に充填した構造となっています.
第1層 第2層 第3層
E6 格子 72 270 720
E7 格子 126 756 2072
E8 格子 240 2160 6720
そして,最終的には簡単なグラフ的算法に帰着されるのですが,1≦n≦8では
n 1 2 3 4 5 6 7 8
下界 2 6 12 24 40 72 126 240
となり,ガウス記号を用いて
下界=n([2^(n-2)/3]+n+1)
の形にまとめられます.→(この式はn>8に対しては成り立ちません.n=9のとき468となるのですが,コクセターの上界401よりも大きくなってしまうからです.)
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そうならば頂点次数に依存すると考えるのがいいかもしれないが,(その12)で検討したように,BCC型空間充填多面体の頂点次数mは
[1]nが奇数のとき
m=3(n−1)/2
n=3のとき,n=3(n−1)/2が成り立つ.
そのときに限り,単純多面体となる.
[2]nが偶数のとき
m=n^2/2
n=2のとき,n=n^2/2が成り立つ.
そのときに限り,単純多面体となる.
もし求めている解がm+1であるとしたら,
[1]n=3→4 (OK)
[2]n=2→3 (NG)
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