■デルトイドの幾何学(その6)

 年の瀬なので,何か大事なことを遣り残したことはないかと振り返ってみたところ,デルトイドの幾何学(その4)において釈然としない点を発見した.釈然としない点は,この星状図形では長さ1の線分を1回転させることはできないのではないかという素朴な疑問である.

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【1】素朴な疑問

 「デルトイドの幾何学」シリーズは「掛谷の問題」に焦点をあてて,2n+1個の尖点をもつ星状領域の面積Snが掛谷定数:(5−2√2)π/24に収束すること,すなわち

  Sn→(5−2√2)π/24<π/11

となることを紹介したものである.その際,半径rの円の直径上に長さ1の線分がおけるものという条件を設けている.

 2n+1個の尖点をもつ星状図形の接線が曲線に挟まれる部分の長さlは,点Pをこの曲線上の任意の点とすると,点Pが尖点上にあるとき接線の長さは最大になること,同じことであるが弧の中間点にあるとき最小になる.そして,点Pが弧の中間点にあるときの接線の長さは,nを大きくすれば次第に1に近づくことになり「長さが1である線分を1回転させるのに必要な最小面積」を与える近似図形になることが理解される.

 すなわち,この星状図形では長さ1の線分を1回転させることはできないが,n→∞になると回転できるようになる.このことから,半径rの円の直径上に長さ1の線分がおけるという条件下でなく,接線の長さの最小値l0が1のときの星状領域の面積Snを求めて,デルトイドの場合と比較すべきではなかろうか?

 最も狭隘な部分をミニマックス化するの際の相似比はl0:1であるから

 r→r/l0,Sn→Sn/l0^2

と補正してみることにしよう.

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【2】計算結果

[1]補正前(その2)

n       r      Sn

1 .788675 .300904

2 .83437 .290756

3 .844221 .2876

4 .848014 .286284

5 .84988 .285616

6 .850937 .285233

7 .851595 .284994

8 .852032 .284814

9 .852338 .284709

10 .852559 .284627

20 .853294 .284336

30 .853436 .284321

40 .853487 .284193

50 .853511 .284723

60 .853524 .284483

70 .853531 .28351

80 .853537 .283473

90 .85354 .283648

100 .853543 .284463

 3尖点星状領域はデルトイドよりもやせた図形で,このときすでに掛谷定数に近い値が得られています.5個の尖点をもつ図形の場合,その面積はデルトイドの面積π/8(.392699)の約3/4(.290756)になります.nを大きくすると数値計算誤差のため,計算結果が揺らいでしまいます.

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[2]補正条件(その4)

n       l0     l0/r

1 .87084 1.10418

2 .958013 1.14819

3 .979092 1.15976

4 .98747 1.16445

5 .991642 1.1668

6 .994045 1.16818

7 .995519 1.169

8 .996509 1.16957

9 .997219 1.16998

10 .9977 1.17024

20 .999471 1.17131

30 .999491 1.17114

40 .999609 1.17121

50 1.00008 1.17172

60 .998292 1.16961

70 .999244 1.17072

80 .997806 1.16903

90 .99679 1.16783

100 1.00001 1.1716

 このとき,r→(2+√2)/4であるから

  l/r → 2(2−√2)=1.17157

なお,デルトイドの場合,r=3/4,l=1であるから

  l/r=4/3=1.33333

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[3]補正後(ミニマックス化)

n       r/l0   Sn/l0^2

1 .905649 .396782

2 .870938 .316801

3 .862249 .300015

4 .858774 .293596

5 .857043 .290451

6 .856035 .288661

7 .855429 .287566

8 .855017 .286813

9 .854714 .286299

10 .854524 .28594

20 .853746 .284637

30 .853871 .28461

40 .853821 .284415

50 .853445 .284678

60 .854984 .285457

70 .854177 .283939

80 .855413 .284721

90 .856289 .285478

100 .853534 .284457

 補正後の3尖点星状領域(n=1)はデルトイドよりも大きいのですが,5個の尖点をもつ図形(n=2)の面積はデルトイドの面積π/8(.392699)よりも小さく約3/4(.316801)になります.nが大きいところではl0→1なので補正前の結果とほぼ同じ値です.

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