■正三角形と六斜術(その5)
【1】六斜術
「六斜術」とは平面三角形ABCの6本の線分間の等式を意味する「和算用語」です.平面三角形ABCにおいて,BC=a,CA=b,AB=cとおき,平面上の点Pに対してPA=d,PB=e,PC=fとするとき
a^2d^2(b^2+c^2+e^2+f^2−a^2−d^2)
+b^2e^2(c^2+a^2+f^2+d^2−b^2−e^2)
+c^2f^2(a^2+b^2+d^2+e^2−c^2−f^2)
=a^2b^2c^2+a^2e^2f^2+d^2b^2f^2+d^2e^2c^2
が成立します.
一見複雑ですが,左辺は相対する線分の2乗の積に,他の線分の2乗の和から自分自身の2乗を引いた量をかけた和
a^2d^2(b^2+c^2+e^2+f^2−a^2−d^2)
+b^2e^2(c^2+a^2+f^2+d^2−b^2−e^2)
+c^2f^2(a^2+b^2+d^2+e^2−c^2−f^2)
であり,右辺は4個の三角形の周辺3本の2乗の積の和
a^2b^2c^2+a^2e^2f^2+d^2b^2f^2+d^2e^2c^2
です.
(証)∠BPC=α,∠CPA=∠β,∠APB=γとおく.このとき
cosγ=cos(α+β)=cosαcosβ−sinαsinβ
両辺を平方すると
cos^2α+cos^2β+cos^2γ=2cosαcosβcosγ+1
第2余弦定理より
cosα=(e^2+f^2−a^2)/2ef
cosβ=(f^2+d^2−b^2)/2fd
cosγ=(d^2+e^2−c^2)/2de
を代入して整理すると当該の形になる.
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【2】オイラーの四面体公式(空間のヘロンの公式)
この節で取り上げるのは,四面体についてのオイラーの問題「6辺の長さがa,b,c,d,e,fで,与えられた4面体の体積を求めよ」です.空間のヘロンの公式というべきものであり,
V’=V/6,V’=Δとして
(12Δ)^2=a^2d^2(b^2+c^2+e^2+f^2−a^2−d^2)
+b^2e^2(c^2+a^2+f^2+d^2−b^2−e^2)
+c^2f^2(a^2+b^2+d^2+e^2−c^2−f^2)
−a^2b^2c^2−a^2e^2f^2−d^2b^2f^2−d^2e^2c^2
この空間のヘロンの公式は,オイラーの公式とも呼ばれるものですが,
(12×体積)^2=六斜術の両辺の差
に等しいということを主張しています.点Pが平面三角形ABCの平面上になく,4点が四面体の頂点をなすときの四面体の体積公式ですから,六斜術は四面体が平面上に退化して体積が0になった極限と解釈することができます.
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前置きが長くなったので,今回は問題設定のみとする.
[Q]円に内接する五角形(辺の長さa,b,c,d,e)がある.このとき,円の直径を求めよ.
六斜術を使って計算することができそうだが・・・?
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