(その18)ではオイラー・マクローリンの和公式を紹介した.その公式をf(x)=x^(ーs)に対して適用してみると,ゼータ関数に対するオイラー・マクローリンの和公式の応用例
ζ(s)=1/(s-1)+1/2-s∫(1,∞)(x-[x]-1/2)/x^(s+1)dx
が得られる.
杉岡幹生氏はこの公式を美しさを感じさせない式という.確かにそうかもしれないが,美しいか美しくないは別として,正しいということだけは示しておいたほうが良さそうだ.
この証明は高校生でもできる簡単なものなので,あえて示す必要がないかもしれないが,とはいっても右辺がζ(s)になることを示しておかないと気持ち悪さを感じる方もおられるはず・・・.
今回のコラムではそのような潔癖な人のために,
ζ(s)=ζ(s)
を示すことにしたい.
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【1】ζ(s)=ζ(s)
P(x)=x−[x]−1/2
とおく.
1<x<2のとき,P(x)=x-3/2
2<x<3のとき,P(x)=x-5/2
・・・・・・・・・・・・・
n<x<n+1のとき,P(x)=x-n-1/2
∫(1,2)(x-3/2)/x^(s+1)dx=-2^(1-s)/(s-1)+3/2・2^(-s)/s
+1^(1-s)/(s-1)-3/2・1^(-s)/s
∫(2,3)(x-3/2)/x^(s+1)dx=-3^(1-s)/(s-1)+5/2・3^(-s)/s
+2^(1-s)/(s-1)-5/2・2^(-s)/s
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
∫(n,n+1)(x-n-1/2)/x^(s+1)dx=-(n+1)^(1-s)/(s-1)+(2n+1)/2・(n+1)^(-s)/s
+n^(1-s)/(s-1)-(2n+1)/2・n^(-s)/s
したがって,
∫(1,∞)(x-[x]-1/2)/x^(s+1)dx=1^(1-s)/(s-1)-1/2・1^(-s)/s-ζ(s)/s
と整理される.これより
1/(s-1)+1/2-s∫(1,∞)(x-[x]-1/2)/x^(s+1)dx=ζ(s)
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【2】計算例
しかし,ゼータ関数に対するオイラー・マクローリンの和公式
ζ(s)=1/(s-1)+1/2-s∫(1,∞)(x-[x]-1/2)/x^(s+1)dx
はこのままでは何の役にも立たない.
そこで,ベルヌーイ数B2kを使って
ζ(s)=1/(s-1)+1/2+ΣB2ks(s+1)・・・(s+2k-2)/(2k)!-s(s+1)・・・(s+2m)∫(1,∞)(-1)^(m-1)Σ2sin2πnx/(2πn)^(2m+1)/x^(s+2m+1)dx
と一般化する.
たとえば,半整数点での値
ζ(1/2)=-1.46035
を求めるには,s=1/2とおき,積分項を省略すると
1/(s-1)+1/2=-1.5
1/(s-1)+1/2+B2/2!・1/2=-1.5+1/24=-1.45833
1/(s-1)+1/2+B2/2!・1/2+B4/4!・15/8=-1.5+1/24-1/384=-1.46094
1/(s-1)+1/2+B2/2!・1/2+B4/4!・15/8+B6/6!・105/16=-1.5+1/24-1/384+1/1536=-1.46029
この計算ではわずか数項で概収束することがわかる.
ζ(1/3),ζ(1/4),・・・
なども同様に求めることができるのである.
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[参]Γ(1/3),Γ(1/4),・・・
Γ(1)=1,Γ(1/2)=√π
はご存知と思われるが,ベータ関数において,a=m/n,b=1/2とおき,t=x^nと置換すると,
∫(0,1)x^(m-1)/(1-x^n)^(1/2)dx=Γ(m/n)√π/nΓ(m/n+1/2)
したがって,
(m,n)=(1,1)のとき,∫(0,1)1/(1-x^1)^(1/2)dx=2
(m,n)=(1,2)のとき,∫(0,1)1/(1-x^2)^(1/2)dx=π/2
(m,n)=(1,3)のとき,∫(0,1)1/(1-x^3)^(1/2)dx=Γ^3(1/3)/2^(4/3)3^(1/2)π
(m,n)=(1,4)のとき,∫(0,1)1/(1-x^4)^(1/2)dx=Γ^2(1/4)/2^(5/2)π^(1/2)
が得られる.
f(x)=1/(1-x^2)^(1/2)
のとき,
sin^(-1)z=∫(0,z)f(x)dx
だから,
2∫(0,1)f(x)dx=3.141592・・・=π (円周率)
f(x)=1/(1-x^4)^(1/2)
としたとき,
∫(0,1)f(x)dx=1.311028・・・=ω (レムニスケート周率)
は,
ω=Γ^2(1/4)/2^(3/2)π^(1/2)
と書けるのである.
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