■ゼータ関数と解析接続(その3)

 ζ(s)の零点がs=1/2+tiの線上にあるというのが有名なリーマン予想ですが,この予想は2つの点で注意が必要です.

[1]解析接続したあとの関数に対する予想であること

[2]s=−2,−4,・・・,−2nという例外零点があること

ζ(0)=1+1+1+1+・・・=−1/2

ζ(−1)=1+2+3+4+・・・=−1/12

ζ(−2)=12+22+32+42+・・・=0

ζ(−3)=13+23+33+43+・・・=1/120

ζ(−4)=14+24+34+44+・・・=0

らは解析接続したあとの関数に対する結果なのです.

 リーマン自身は解析接続法を2つ示しました.解析接続法ごとに得手・不得手はありますが,解析接続の一意性により,どんな解析接続法でも同じ結果が得られるはずです.ここでは積分を使わない方法を紹介します.

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【1】二項展開

  (n,k)=n(n−1)・・・・(n−k+1)/k!

において,n=−1とおくと,

  (−1,k)=(−1)^k

  (1+x)^-1=1−x+x^2−x^3+x^4−・・・

 n=2とおくと

  (−2,k)=(−1)^k(k+1)

  (1+x)^-2=1−2x+3x^2−4x^3+5x^4−・・・

形式的にx=1とすると

  1/4=1−2+3−4+5−・・・

=(1+2+3+4+5+・・・)−2(2+4+6+・・・)

=(1+2+3+4+5+・・・)−4(1+2+3+・・・)

=−3(1+2+3+4+5+・・・)

  1+2+3+4+5+・・・=−1/12

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【2】二項展開を用いた解析接続

  ζ(s)=Σ1/n^s=1+2^-s+3^ーs+4^-s+・・・

=1+2^-s+Σn^ーs  (n=3〜)

=1+2^-s+Σ(n+1)^ーs  (n=2〜)

=1+2^-s+Σn^-s(1+1/n)^ーs  (n=2〜)

 ここで,0<1/n≦1/2となるので,二項展開が使えて

=1+2^-s+Σn^-s((−s,k)n^ーk)

=1+2^-s+Σ(−s,k)n^-sーk

=1+2^-s+Σ(−s,k)(ζ(s+k)−1)

 したがって,

ζ(s)=1+2^-s+(ζ(s)−1)−s(ζ(s+1)−1)+s(s+1)/2(ζ(s+2)−1)−s(s+1)(s+2)/6(ζ(s+3)−1)+・・・

s(ζ(s+1)−1)=s(s+1)/2(ζ(s+2)−1)−s(s+1)(s+2)/6(ζ(s+3)−1)+s(s+1)(s+2)(s+3)/24(ζ(s+4)−1)−・・・

sをs−1に置き換えて

(s−1)(ζ(s)−1)=(s−1)s/2(ζ(s+1)−1)−(s−1)s(s+1)/6(ζ(s+2)−1)+(s−1)s(s+1)(s+2)/24(ζ(s+3)−1)−・・・

 これがζ(s)を与える関係式で,Re(s)>0までの解析接続を与えます.これを漸化式のように用いると

ζ(0)=1+2/(−1)+1/2・1+0+0+・・・=−1/2

ζ(−1)=1+2^2/(−2)+(−1)/2(ζ(0)−1)−(−1)/6+0+0+・・・=−1/12

ζ(−2)=1+2^3/(−3)+(−2)/2(ζ(−1)−1)−(−2)/6(ζ(0)−1)+(−2)(−1)/24・1+0+0+・・・=0

というように求められます.

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