■立方体と正八面体の断面(その10)
【1】ボールの定理
原点を通り,aに直交する超平面H(a)のaの成分は,
0≦a1≦a2≦・・・≦an, a1^2+a2^2+・・・+an^2=1
を満たすものとしても一般性を失われません.もし,akが負ならば,xk軸の向きを逆にすることにより,akは正となるからです.
このとき,H(a)によるn次元単位立方体の切り口の体積は
Vn(a)=1/π∫(-∞,∞)Πsinc(akx)dx
と表されます(ボールの定理,1986年).この定理の証明は紹介しませんが,主として一様分布の確率論的議論によって証明されます.
また,同じく,ボールによって
1≦Vn(a)≦√2
であることも証明されています(ボールの不等式).
Vn(a)=√2
になるのは,
a1=a2=・・・=an-2,an-1=an=1/√2
のとき,すなわち,n−1次元切断面が超立方体のn−2次元面を含むときです.
ボールの不等式は「1辺の長さが1の正方形(2次元単位立方体)の切り口は単に線分になるから,その長さが最大となるのは対角線であって,最大値は√2となる.対角線とは頂点とその対角にある頂点を結ぶ線分で,正方形の原点を通るものである.また,(3次元)単位立方体の断面は,3角形・4角形・5角形・6角形などいろいろな形をとるが,立方体の中心を通り,辺とその対蹠に位置する辺を含む平面で切ったとき,断面積は最大値√2になる.」ことをもっと高次元化しても成り立つことを主張するものです.
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