■ボロノイ細胞と平行多面体(その8)

 一種類の合同な正多面体による空間充填では立方体だけが空間充填形なのですが,正多面体同士の組合せでは,正四面体と正八面体を組み合わせたものだけが空間を充填します.正四面体と正八面体の二面角が互いに補角ですから,両者を組み合わせて空間充填が可能になるのです.

 2種類以上の多面体を使うにせよ使わないにせよ,適当に切り貼りすれば平行六面体と分割合同になるものが空間充填可能になるはずですが,その際,

  (1)立方体を原型とする空間充填

  (2)正四面体(+正八面体)を原型とする空間充填

に分類することができそうです.

 前者の例としては

  (a)菱形十二面体の二面角    :δ=2π/3

  (b)工藤の空間充填三角錐の二面角:δ=π/2,π/3

なので立方体と分割合同,後者の例としては

  (c)切頂八面体

があげられます.(その4)において,正四面体を切稜・切頂して切頂八面体を作ったことを思い出せば切頂八面体が後者に分類されることがおわかり頂けるでしょう.

 今回のコラムでは,中川宏さんにお願いして工藤の空間充填三角錐を作ったときの立方体・菱形十二面体の分割と同じ方法で切頂八面体の分割を試みてもらうことにしました.驚いたことに,この方法でも工藤の空間充填三角錐ができるのです.

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【1】切頂八面体の六分割

 立方体を各面を底面として中心から放射状に6等分すると四角錐が6個できる.これを1/6四角錐と呼ぶことにする.この四角錐を正方形面の対角線で2等分したものが1/12三角錐,対角線で4等分したものが1/24三角錐である.1/24三角錐2個を底面同士で貼り合わせると,六面体ではなく,辺の長さの比が2:√3:√3の三角形を4枚貼り合わせた三角錐(2/24三角錐)ができる.これが工藤の空間充填三角錐である.

 立方体(f=6),菱形十二面体(f=12),切頂八面体(f=14)はよく知られた空間充填立体であるが,それぞれの六分割体を掲げる.

 切頂八面体を六角形面の中心を通るように六分割するとダイヤモンドの指輪のような9面体(4^55^4)ができるが,さらにこれを正方形面が田の字になるように4等分すると,正方形1枚,大きな凧形1枚,小さな凧形2枚,不等辺四角形2枚からなる6面体(4^6)となる.

 この24分割体を4つ,小さな凧形正方形が内側に隠れるように併せると四面が合同な三角錐が得られるのだが,各面は辺の長さの比が2:√3:√3の三角形となっていて,工藤の空間充填三角錐であることがわかる.

 工藤の空間充填三角錐は菱形十二面体の六分割体を4等分したものであるから,切頂八面体の24分割体96個で菱形十二面体ができることになる.工藤の空間充填三角錐は菱形十二面体(f=12),切頂八面体(f=14)にまたがる重要な空間充填多面体(ES細胞)ということになるが,さらにこの六面体は工藤の空間充填三角錐の素粒子になっていて「中川宏の空間充填六面体」と名づけたい.

 なお,ここでは正方形面が田の字になるように4等分したが,もうひとつの分割(正方形面の対角線でマスの字型に4等分したもの)についても検討してもらったのだが,面白い形にはならなかったということである.

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【2】切頂八面体の八分割

 切頂八面体を正方形面の対角線で8等分すると7面体(3^35^36^1)が得られる.この多面体は別宮の空間充填のところででてきた3等分3点切頂型四面体の3辺が作る斜交座標を直交座標に直した形をしていて,この八分割体を2つ併せると元の切頂八面体の体積の1/4の立方体ができる.

 それに対して,正方形面が田の字になるように8等分すると7面体(3^14^45^2)が得られ,これを4つ併せると元の切頂八面体の体積の1/2の直方体ができる.

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