数には整数,分数,根号数,超越数の種類があり,整数,有理数,代数的数,実数という階層をなしている.整数,分数,根号数は数直線のうちのほんのわずかな部分を占めるにすぎない.数直線上の数の大部分を占めるのはπやeなどの超越数である.実数から無作為にひとつ数を選ぶとしたら,それは超越数なのである.
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【1】無限連分数
2次方程式の解となる√nの連分数展開を求めると,たとえば
√2=[1:2,2,2,2,・・・]
√3=[1:1,2,1,2,1,2,1,2,・・・]
√7=[2:1,1,1,4,1,1,1,4,・・・]
のように循環型の単純連分数に展開されることが知られている(ラグランジュの定理).
平方根を無限連分数に表す手順はわりやすく,たとえば,1<√2<2であるから
√2=1+(√2−1)
=1+1/(√2+1) 2<√2+1<3
=1+1/{2+(√2−1)}
=1+1/{2+1/(√2+1)}
=1+1/{2+1/(2+(√2−1)}
=1+1/{2+1/(2+1/(√2+1)}
=1+1/{2+1/{2+1/{2+1/{2+・・・
の手順を何度も繰り返すことにより,
√2=[1:2,2,2,2,・・・]
ができあがる.
黄金比φ=(1+√5)/2が,無限連分数
φ=[1:1,1,1,,1,・・・]
や無限の入れ子の根号
φ=√(1+√(1+√(1+√(1+・・・
で3通りにも表されるという事実は魔法のようにさえ思える.
有理数は有限連分数,無理数で代数的数の場合は無限循環連分数,超越数は無限非循環連分数になる.たとえば,超越数eの連分数展開は,
e=[2;1,2,1,1,4,1,1,6,1,1,8,1,1,10,1,1,12,1,1,14,1,1,16,・・・]
と書け,数字の出方が自然数順になっていることがわかる.すなわち,
e=[2;1,2,1,1,4,1,1,6,1,・・・,1,2n,1,・・・]
πの連分数展開
π=[3;7,15,1,292,1,1,1,2,1,3,1,14,2,1,1,2,2,2,2,1,84,2,1,1,15,3,13,1,4,2,6,6,99,1,2,2,6,3,5,1,1,6,・・・]
にはなんの規則性も見あたらないようにみえる.もちろん,一般項は見つかっていない.
10進数表現しても
e=2.718281827459045・・・
π=3.141592653589793・・・
eには何かパターンがありそうに見えるが,πの数の並び方には何のパターンもない.しかし,単純連分数(分子がすべて1)に限らなければ,
π/4=1/{1+1^2/{2+3^2/{2+5^2/{2+7^2/{2+9^2/{2+・・・}
分子には奇数の平方が並んでいるというパターンを見つけることができる.
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【2】ヒンチンの定理
単純循環連分数
L=[a:b,b,b,b,・・・]
で表される数Lを求めてみることにしよう.
L−a=R=[0:b,b,b,b,・・・]=1/(b+R)
R^2+bR−1=0 → R=(−b+(b^2+4)^(1/2))/2
L=a+R=a−b/2+(b^2/4+1)^(1/2)
同様に,2項が循環する連分数は
[a:b,c,b,c,・・・]
=ab−bc/2+((bc)^2/4+bc)^(1/2)
ヒンチンは,一般の連分数
[a0:a1,a2,a3,・・・,an,・・・]
の大多数についてあてはまる法則を発見した.幾何平均(a1a2・・・an)^1/nの値がn→∞のとき,ある無限乗積から定まる定数
(a1a2・・・an)^1/n→Π(1+1/k(k+2))^logk/log2=2.685452001・・・
に収束するというものである.ただし,分母に明確なパターンのある代数的数やeをはじめとするいくつかの超越数は例外になる.
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【3】無限乗積
Σ1/n!=e
Σ(-1)^n+1/(2n-1)=π/4 (Σ(-1)^n+1/n=log2)
Σ1/n^2=π^2/6 (Σ1/n^4=π^4/90)
などはπやeが出現する無限級数である.それに対して,無限乗積にもπの現れるものがある.
Π(2n)^2/(2n-1)(2n+1)=π/2
Π(4n)^2/(4n-1)(4n+1)=π/4・√2
これらの例は
[参]クロースン「数学の謎」青土社
から拝借したが,収束は遅いものの
(Πp)^1/n=e
もびっくり仰天させられる式である.
無限級数Σanに対応する無限乗積がΠ(1+an)で,Π(1+an)はΣanが収束する場合に限り収束する.たとえば,
Π{1+(-1)^n+1/(2n-1)}=√2
Π{1-1/n^2}=1/2
Π{1-4/n^2}=1/6
Π{1+1/n^2}=sinh(π)/π≒3
Π{1+1/n^3}=cosh(π√3/2)/π≒2.428
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【4】オイラー積・ハーディ・リトルウッド積・アルティン積
オイラーもすべての整数とすべての素数を結びつける無限乗積を発見しています.
Σ1/n^s=Π1/(1−p^-s)
s=2とすると
Σ1/n^2=Π1/(1−p^-2)=π^2/6=1.644934
右辺の計算は100以下の最初の25個の素数だけの積を使うだけでも1.641945となり,0.2%も狂いがありません.(1−p^-s)^-1はオイラー積と呼ばれ,ゼータ関数と素数の間をつなぐ式になっています.
[1]双子素数
素数は無限個ありますが,ガウスはπ(x)をx以下の素数の個数とすると,
π(x)〜x/logx (x→∞)
が成り立つだろうと予想しました.この予想はリーマンの研究を経て,1896年,フランスの数学者アダマールとプーサンによって証明されました.これを素数定理といいます.
また,その差が2であるような素数のペア(p,p+2)を双子素数と呼びます.小さな双子素数には(3,5),(5,7),(11,13),(17,19),・・・など,ちょっと大きなものでは(22271,22273),・・・などがあります.
双子素数の分布に関しては,ハーディとリトルウッドによって,
πtwin(x)〜Cx/(logx)^2
ただし,pを3以上の素数として
C=2Π(1−1/(p−1)^2)=1.3203・・・
と予想されています.ここで,Cはオイラー積のアナログであり,双子素数の場合のゼータ関数とみなすことができます.定まった用語ではないのですが,ハーディ・リトルウッド積と呼んでいいでしょう.この法則は経験的には正しそうであり,双子素数はたぶん無限組あると信じられています.
[2]10を原始根とする素数
1/7=0.142857142857・・・
(循環節:142758の長さ6)
1/17=0.0588235294117647・・・
(循環節:0588235294117647の長さ16)
のように,1/pを10進法で小数展開したときの循環節の長さがp−1となる特別な素数を10を原始根とする素数といいます.
10を原始根とする素数,たとえば,
7,17,19,23,29,47,59,61,97,・・・
の密度について,アルティンは
π10(x)=Cx/(logx)
と予想しています.
ただし,pを素数として,Cは
C=Π(1−1/p(p−1))=0.37395・・・(アルティンの定数)
ここでふたたび,オイラー積のアナログ:アルティン積が出現しました.もし,これが正しいとすれば,このような素数は無限にあり,素数全体のうち約3/8を占めることになるのですが,残念ながら証明されていません.
しかしながら,リーマン予想:ζ(s)の零点がs=−2,−4,・・・,−2nとs=1/2+tiの線上にある:が正しいと仮定するとアルティン予想の成り立つことが証明できることがわかっています.
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