■群と魔方陣(その6)

 n×n個の升目に1〜n^2までの数を入れ,各行各列の合計が

  n(n^2+1)/2

になるように並べたものが「魔方陣」である.よく知られたパズルであるから誰しも試行錯誤したことがあるに違いない.

 たとえば,

  [1,5,9]

  [8,3,4]

  [6,7,2]

は3次の魔方陣であり,縦の並びも横の並びもその和はすべて15となっている.ただし,ここでは対角線の和がそうなることは要求しないことにする.

 1次魔方陣はあまりにもつまらない.2次魔方陣は存在しない.1から9までの数字を3×3マスにあてはめる3次魔方陣は回転や鏡映をのぞいてただ1種類である.1から16までの数字を4×4マスにあてはめる4次魔方陣は回転や鏡映をのぞいて880種類ある.1から25までの数字を5×5マスにあてはめる5次魔方陣は回転や鏡映をのぞいて275305224種類あることがわかっている.6次魔方陣は何個あるかわからないほどある.急速に複雑さが増していくのである.

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 ここでは,縦の並びも横の並びも対角線もその和はすべて15となっている3次の魔方陣について考える.

  [8,3,4]

  [1,5,9]

  [6,7,2]

 試行錯誤でやっていけば,あるいは直感で真ん中の升目には数の真ん中にある5をいれるべきということがわかるが,少し分析してみよう.

  n(n^2+1)/2=3(3^2+1)/2=15

であるから,真ん中の升目と通る縦横対角線に含まれる数の和は60.ここには真ん中の升目は4回,それ以外はすべての升目が1度だけ含まれるから,

  (60−45)/3=15/3=5

で真ん中の升目には5が入ることになる.

 真ん中の升目を挟む2数は,足して10.したがって,(1,9)(2,8)(3,7)(4,6)のペアでなければならない.

 もし,9を隅の升目におくと,対角線上の隅には1.隅から出る縦横対角線には9の升目が3回含まれ,また,含まれる升目の合計は45であるから,

  (45−23)/2=6

となる数は(1,5)(2,4)となって,1を重複して使わなければならなくなる.これは不可能.したがって,9は列の真ん中におくしかない.

 この議論は1から始めてもよいが,9の場合と対称的になり,1も列の真ん中におくしかないことになる.

  [*,*,*]

  [1,5,9]

  [*,*,*]

 残った奇数は3と7であるが,縦の並びも横の並びも対角線もその和はすべて15であるから,4隅に奇数をおくと重複して使わなければならなくなり,これは不可能.4隅には偶数2,4,6,8のどれかしかなくなる.

 そこで,たとえば,2と4を9を挟んでおくと

  [*,*,4]

  [1,5,9]

  [*,*,2]

残りの升目を埋めるのは1通りしかない.

  [8,3,4]

  [1,5,9]

  [6,7,2]

 この図を回転させる,あるいは表裏逆転させるとさらに7つの解が得られるから合計8つの解があることになる.9をおくときには4つの場所が可能性としてあり,2と4を9を挟んでおく場合も2通りの置き方があり,全体では8通りの置き方がある.しかし,本質的には1通りだけということになるのである.

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