■和算と紋様(その27)

 ここまで来たからには,ボーアの原子模型について説明したいと思います.

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 物質の不連続性(原子),電気の不連続性(電気素量e)に引き続き,エネルギーの不連続性(hν)という自然の秘密は徐々に暴かれてきました.1913年,ボーアはプランクが提案した量子化の概念を原子構造に導入することによって,この難点を解決できることに気づきました.

 ボーアはバルマーやリュードベリのスペクトル系列の公式:

  1/λ=R(1/m^2−1/n^2)

の中に,

a)原子の中には電子が輻射を行わない軌道がある.

b)輻射は電子がある軌道から別の軌道に跳躍するときだけに生じる.

ことを見つけだし,原子自体の微細構造を明らかにしたのです.

 リュードベリ定数Rは物理学の普遍的な定数で,電子の質量m,電子の電荷e,光速度c,プランク定数hと式

  R=2π^2me^4/ch^3

で結ばれています.しかも,eについては4乗,hについては3乗しているのですからかなり複雑な関わり方をしています.

 クーロン力という引力と遠心力という離心力の釣り合いだけでなく,量子条件すなわち電子のエネルギーが量子化されていれば,太陽系の衛星と異なり,電子の軌道は任意ではあり得ず,一定半径の軌道上を動くことになり,原子は安定,かつ,原子スペクトルは線スペクトルを与えることを説明することができます.ボーアの理論は原子構造論にとって画期的・革命的な出発点である点は高く評価されます.実際,ボーアの理論が発表されて以来,物理学や化学結合論はこの理論を軸にして発展・展開しました.

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