■正5角形・正7角形とトレミーの定理(その1)

 コラム「作図不可能な正7角形と作図可能な正5角形」では,

[定理1]単位円に内接する正n角形のひとつの頂点からでるすべての辺と対角線の長さの積はnに等しい.

が成り立つ.

 また,

[定理]単位円に内接する正多角形の対角線の長さの平方和は頂点数の2乗に等しいは

[定理2]単位円に内接する正n角形のひとつの頂点からでるすべての辺と対角線の長さの平方和は2nに等しい.

と同値である.

 定理2自体がピタゴラスの定理の拡張のようなものであるから,ピタゴラスの定理は知っているが三角法(座標幾何学)あるいは複素数(複素指数関数)は知らないものとして,この2つの定理を利用して正n角形の作図問題にアプローチした.

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[1]n=3のときは対角線をもたないので,辺の長さをxとすると

  [定理1]x^2=3→x=√3.

[2]n=4のとき,この単位円に内接するのは正方形であるから,可能な長さは辺の長さをxとすると,対角線の長さは2であるから,

  [定理1]2x^2+2ー2→x=√2.

[3]n=5のときはそれほど簡単ではないが,辺の長さをx,対角線の長さをyとすると,

  [定理1]→x^2y^2=5

  [定理2]→2x^2+2y^2=10

より,2次方程式の範囲内で(x,y)が求まる.

[4]n=6のとき,辺の長さxと対角線の長さyと2として,

  [定理1]→2x^2y^2=6

  [定理2]→2x^2+2y^2+2^2=12

このままでも(x,y)は求まるが,ピタゴラスの定理を利用するとx^2+y^2=2^2.

[5]n=7のとき,辺の長さxと対角線の長さyとzとして,

  [定理1]→x^2y^2z^2=7

  [定理2]→2x^2+2y^2+2z^2=14

条件が足りないことがわかるだろう.また,2次方程式の範囲内で解けるかどうか,甚だ疑問である.

[6]n=8のとき,辺の長さxと対角線の長さyとzと2として,

  [定理1]→2x^2y^2z^2=8

  [定理2]→2x^2+2y^2+2z^2+2^2=16

ピタゴラスの定理を利用すると

  x^2+z^2=2^2,2y^2=2^2

より(x,y,z)が求まる.

[6]n=9のとき,辺の長さxと対角線の長さyとzとwとして,

  [定理1]→x^2y^2z^2w^2=9

  [定理2]→2x^2+2y^2+2z^2+2w^2=16

条件が足りない.2次方程式の範囲内で解けるかどうかも疑問.

 このままではn=17の場合も条件が足りないということになるが,ともあれこのような単純素朴なことからも正5角形は作図可能であることがわかる.また,ガウスの証明ほど確定的でないにせよ,おぼろげながら正7角形,正9角形は作図不可能であることが示唆されたことになる.

 なお,定理2の面白いところは,2次元図形だけでなくすべての次元で通用することである(無理数でなく整数! この美とエレガンス!).それに対して,定理1は2次元だけで通用する.

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