■スターリングの公式の同値な言い換え(その10)

 (その4)を補足しておきたい.

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【1】保型形式とラマヌジャンの愛した和

 ラマヌジャンは

  Σn^5/{exp(2πn)-1}=1/504

  Σn/{exp(2πn)-1}=1/24-1/8π

  Σn^3/{exp(2πn)-1}=1/80(ω/π)^4-1/240

  Σ1/n{exp(2πn)-1}=-π/12-1/2log(ω/√2π)

も証明している.

 ここで,πとωはそれぞれ,

  π=2∫(0,1)1/√(1-x^2)dx=3.14159・・・(円周率)

  ω=2∫(0,1)1/√(1-x^4)dx=2.62205・・・(レムニスケート周率)

  ∫(0,1)1/(1-x^4)^(1/2)dx=Γ^2(1/4)/2^(5/2)π^(1/2)

 ガウスの算術幾何平均

  M(a,b)=π/2/∫(0,π/2)dθ/(a^2cos^2θ+b^2sin^2θ)^(1/2)

より

  M(√2,1)=π/ω

また,レルヒの公式

  Δ(i)=(ω/π√2)^12=Γ^24(1/4)/2^24π^18

  E4(i)=3(ω/π)^4=3Γ^8(1/4)/64π^6

もこの兄弟分にあたる.

 それではどうやってこれらの級数を証明したらいいのだろうか? 杉岡幹生氏に教えてもらったのだが,アイゼンシュタイン級数

  E6 → Σn^5/{exp(2πn)-1}=1/504

  E2 → Σn/{exp(2πn)-1}=1/24-1/8π

  E4,ラマヌジャンのΔ → Σn^3/{exp(2πn)-1}=1/80(ω/π)^4-1/240

を用いればこれらを証明できるということであった.

 とはいえ自力では証明できなかったので,

  [参]黒川信重・栗原将人・斉藤毅「数論U,Fermatの夢と類体論」岩波書店

からの受け売りの証明を記しておく.

  Ek(-1/z)=z^kEk(z)  (双対性)

にz=iを代入すると−1/i=iになることを利用するのである.

  Σn^5/{exp(2πn)-1}=1/504

(証)E6(-1/z)=z^6E6(z)にz=iを代入すると,E6(i)=i^6E6(i)=−E6(i)よりE6(i)=0

  E6(i)=1−504Σσ5(n)exp(-2πn)=1−504Σn^5/{exp(2πn)-1}

  Σn/{exp(2πn)-1}=1/24-1/8π

(証)E2(-1/z)=z^2E2(z)+6z/πiにz=iを代入すると,E2(i)=-E2(i)+6/πよりE2(i)=3/π

  Σσ(n)exp(-2πn)=Σn/{exp(2πn)-1}=1/24-1/8π

  Σn^3/{exp(2πn)-1}=1/80(ω/π)^4-1/240

(証)レルヒの公式より,E4(i)=3(ω/π)^4

  E4(i)=1+240Σσ3(n)exp(-2πn)=1+240Σn^5/{exp(2πn)-1}

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【2】ラマヌジャンの等式の近似値

  ζ(s)=1/Γ(s)∫(0,∞)x^(s-1)/{exp(x)-1}dx

において,x=2πyとおくと,dx=2πdyより,

  ∫(0,∞)y^(s-1)/{exp(2πy)-1}dy=ζ(s)Γ(s)/(2π)^s

 これより,

  Σn^(s-1)/{exp(2πn)-1} 〜  ζ(s)Γ(s)/(2π)^s

ここで,ζ(2)=π^2/6,ζ(4)=π^4/90,ζ(6)=π^6/945を代入すると,

  Σn^5/{exp(2πn)-1}=1/504 〜 1/504

  Σn^3/{exp(2πn)-1}=1/80(ω/π)^4-1/240 〜 1/240

  Σn/{exp(2πn)-1}=1/24-1/8π 〜 1/24

  Bose-Einstein統計 → ζ(x)=1/Γ(x)∫(0,∞)t^(x-1)/(exp(t)-1)dt

と同様に,

  Fermi-Dirac統計 → ζ(x)=1/(1-2^(1-x))Γ(x)∫(0,∞)t^(x-1)/(exp(t)+1)dt

  Maxwell-Boltzmann統計 → Γ(x)=∫(0,∞)t^(x-1)exp(-t)dt

が対応すると見ることができる.

  Σn^(s-1)/{exp(2πn)+1} 〜  ζ(s)Γ(s)(1-2^(1-s))/(2π)^s

  Σn^(s-1)/{exp(2πn)} 〜  Γ(s)/(2π)^s

したがって,

  Σn^5/{exp(2πn)+1} 〜 (1-2^(-5))/504=31/(32・504)

  Σn^3/{exp(2πn)+1} 〜 (1-2^(-3))/240=7/(8・240)

  Σn/{exp(2πn)+1}=1/24-1/8π 〜 (1-2^(-1))/24=1/(2・24)

  Σn^5/{exp(2πn)} 〜 6!/(2π)^6=45/(4π^6)

  Σn^3/{exp(2πn)} 〜 4!/(2π)^4=3/(2π^4)

  Σn/{exp(2πn)} 〜 2!/(2π)^2=1/(2π^2)

 実は,

  Σn^k/{exp(2πn)}=?

については近似値を求める必要はなく,

  Σ1/n{exp(2πn)}=-log(1-exp(-2π))

  Σ1/{exp(2πn)}=1/(exp(2π)-1)

  Σn/{exp(2πn)}=exp(2π)/(exp(2π)-1)^2

  Σn^2/{exp(2πn)}=exp(2π)(exp(2π)+1)/(exp(2π)-1)^3

  Σn^3/{exp(2πn)}=exp(2π)((exp(4π)+4exp(2π)+1)/(exp(2π)-1)^4

  Σn^4/{exp(2πn)}=exp(2π)((exp(6π)+11exp(4π)+11exp(2π)+1)/(exp(2π)-1)^5

  Σn^5/{exp(2πn)}=exp(2π)((exp(8π)+26exp(6π)+66exp(4π)+26exp(2π)+1)/(exp(2π)-1)^6

などと計算されます.

 k<−1の場合は,ポリログ関数が出現します.

  Σ1/n^2{exp(2πn)}=polylog(2,exp(-2π))=L2(exp(-2π))

  Σ1/n^3{exp(2πn)}=polylog(3,exp(-2π))=L3(exp(-2π))

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